■「詰んだ状態」妊娠による自主退学で生じる問題点

自主退学の多い理由
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 元高校教師で、妊娠によって中退した女性も通える通信制のサポート校を運営している野村泰介氏によると、妊娠による自主退学で生じる問題点は、「経済的に自立していない状況下での子育てに対する金銭上及び精神的不安」、「周囲のサポートの弱さ」、「得ることのできなかった『高卒資格』」、「学歴がないことによる就労問題」。

 野村氏は「中卒で社会に出て、お子さんがいて、シングルマザーという状況は、言葉を選ばずに言えば『詰んだ状態』と見られがちではないか。どうしても周囲のサポートが必要になってくる。経済的な面、メンタル面のサポートなども必要になってくるが、なかなかない。口で言うのは簡単だが、当事者を目の当たりにするとないと思う」と説明する。

 文部科学省が公立高校に通知した文書によると、妊娠した生徒の対応は「生徒に学業継続の意思がある場合、安易に退学処分や事実上の退学勧告等の対処は行わない」、「退学以外に休学、全日制から定時制・通信制への転学など必要な情報提供を行うこと」だという。

 こはるさんの場合は卒業まであとわずかという時期だったが、学校側は卒業へのサポートを考えることなく「高校生が性行為をするなんて」とタブー視されたという。野村氏は「どこの学校にも校則がある。その中で、不純異性交友は無期停学もしくは退学みたいな規定が、10年、20年前だとほぼすべての学校であった。現在は合理的配慮という言葉が割と定着してきているので、若干進んでいる気もするが、ガラッと変わった印象はない」と答えた。

 コラムニストの小原ブラス氏は、日本の学校について、「学問以外のところで評価を受ける部分が多い」と指摘し、「家庭と一緒に子供を育てる考え方は、小学生ぐらいまでで、中学、高校では、もっとドライな学問でいいと思う。この期間に何かあったら休学して、また1年後同じように学校行って、これだけの単位は取る。例えば、体育を取らないといけないなら、行ける時に1単位だけ取って卒業を認めるみたいにする必要があると思う」との見方を示した。

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