■アサド政権による弾圧「日本国内にも密告する人がいる」

シリア勢力図
拡大する

 NPO法人Stand with Syria(スタンド・ウィズ・シリア)副理事長の杉谷遼氏によると、アサド政権による弾圧には、「民主化運動を武力弾圧」「数十万人以上を虐殺」「不当逮捕」「収容所への強制連行」「逮捕者等への拷問」「密告による監視社会」「言論弾圧で政権批判を封殺」などがあったという。

 アセムさんは「実はテレビで顔と本名を出すのは(今日が)初めてだ」といい、「もし、アサド政権に反対と言ったら、シリアにいる家族が拷問されるかもしれない。その怖さがあって、ずっと黙っていた。だからこれまでは裏からシリアのサポートをしていた」と明かした。

 アサド政権の情報統制は厳しく、杉谷氏は「日本国内でも批判的な発言があれば、政権側に密告する人がいる。発言のチェックは政権みずからというよりも、密告者がやっている。我々に情報が入ってこないのは、厳しい監視体制が敷かれているためで、現地からのSNS情報などを頼りに、現状をつかまざるを得ない」と説明した。

■政権崩壊となった要因

アサド政権支援の弱体化
拡大する

 杉谷氏は、短期間での政権崩壊となった要因について、「支援していたロシアとイランの弱体化」を挙げる。「ウクライナ問題や、イスラエルのガザ侵攻、レバノンとの戦争などで、戦力をシリアに割けなくなった。今回もアサド政権から2カ国に要請があったが、手に負えない状況だった」という。

 加えて、「攻撃を主導したHTSの姿勢の変化」もあり、「元々はイスラム過激派を掲げていたが、融和政策を出すようになり、力を蓄積していった」と続ける。「アサド政権の兵士が引き上げていく様子が、SNSで拡散されていた。アサドに忠誠を誓うような軍ではなくなり、危険にさらされれば頑張れないとなったのではないか」。

■今後はどうなる?日本ができることは?
この記事の写真をみる(5枚)