■ニチガク講師「社長が交代したのも知らなかった」

 ニチガクの世界史講師・森川晶雄氏は、1月4日の初出勤で閉鎖を知ったという。「社員に呼び止められて、張り紙を見た。教材や自前のプリントを持っていたが、授業の1時間前に、今日の授業も今後の仕事もなくなったと通告された」。

大学受験予備校「ニチガク」閉鎖
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 直近の給料も未払いだと明かす。「塾や予備校は単年契約で、契約時に支払いタイミングを説明する義務がある。ニチガクは『翌月末に払うルールだ』と説明していたが、11月分が12月末に入っていなかった。そもそもここ4、5カ月は2、3日入金が遅れていた。受付で問うと、『給料担当者の社長に言ってもらわないと』と言われた」。しかし、当の社長が取材に「お金に関してはわからない」と返答していることから、「みんな完全にデタラメを言っている」と憤りをあらわにする。

 さらに、「破産してから昨日まで、社長が交代したのも知らなかった。前社長は契約時に1年に1回は必ず会うが、取材に応じていた現社長は知らない人だった」とした。

 1月6日の共同通信によると、代理人弁護士は「ここ数年、生徒数が激減し経営が苦しくなっていたと把握。生徒数減少が止まらない中、パソコンの導入や自習室の整備に多額の投資をしたのが重荷となり資金難に陥った」とコメントしている。

 個別指導、少人数指導学習塾「プラスティー」代表で、教育アドバイザーの清水章弘氏は、「オンラインじゃない塾では『自習室の確保』が受験生の第一条件。家に居るとスマホで動画SNSを見てしまう。自習室に持ち込まず、集中して勉強するのがトレンドだ」と解説する。一方で、自習室を売りにすると、「席がなかったら『詐欺だ』とクレームが来る。生徒数と利用者数を読んで、大きさを決めるのは賭けだ」といった側面も持つ。


 中高生向けに英語塾を開いているリザプロ社長の孫辰洋氏は、「この時期の倒産は、確実に計算している。冬期講習直前で、一括のキャッシュが入る。12月、1月でそれだけは回収しようとした」と推測する。

 森川氏も「絶対に計画倒産だ。冬期講習で、生徒から追加の受講料が集まった。1億円にのぼる借金を少しでも減らすために、集めるだけ集めて、少しだけ講習会を開いて破産した」と考察した。

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