■目の前で自分が作ったダンスが…「本当に複雑だった」

著作権とは
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 「著作権」は、書籍や音楽、映像などがイメージしやすいところだが、弁護士の福井建策氏は「創作した人、クリエイターが『私に無断で使わないでね』と言える権利が著作権。『創作的な表現』というが、その人なりの個性が表れている、オリジナルでしかも具体的な表現が守られる。だから根底にある基本的な着想、アイディアなどは守られない。また誰がやってもある程度同じになりそうな、いわゆるありふれた定型的な表現は、誰かが独占してしまうと大変ことになるので、これにも著作権は及ばない」と説明した。

 創作物の中には、ダンスも含まれる。振付師のTSUGU a.k.a Tg氏は、自分が作ったダンスの振り付けが、目の前で無断で使われるという経験をした当事者だ。「あるスポーツメーカーのファッションショーにゲストで出演した時に、 キッズダンスのパフォーマンスがあった。そのキッズダンスが、僕たちがクラブのショータイムで使った音源と振り付け、丸っきりそのまま使われていた」と驚いた。

 後に共通の知人を介して謝罪を受けたというが、「まさかそんなことがあるとは思わなかった。僕たちとしても、ある種のリスペクトというか、いいものだと思っていただいたから、そのまま使っていただいたという、複雑な感情だった」と当時の心境を思い起こし、「本当に複雑。許せないというよりも、そこに行く前。同じような事例は耳にしている。楽曲は管理されているけど、ダンスに関しては権利を管理している団体もないし、登録するというプロセスもないので、無法地帯というのが一番当てはまる」と、ダンスと著作権の関係を指摘した。

 法律の観点ではどうか。福井氏はダンスでも「過去、いくつか裁判になっているケースがある」と述べる。「フラダンスの振り付けも認められたことがある。歌詞をハンドモーションという手の動きに変換するが、その歌詞の解釈が独自。それに対する手の動きの選び方に独自性があるので、著作権で守られている。一方で、昔からあるステップ、この歌詞だともうこの手の動きは定型的なもの、たとえば社交ダンスについて、これは昔からあるステップだから著作権を認めないこともあった」と、過去の事例を示した。

■ダンスも音楽と同じ「組み合わせ」に光明
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