「ちゃんとした医師が中絶できなくなるのは危険」
昨年結婚、3カ月前に出産を経験した作家の鈴木涼美氏は、20歳の頃に人工妊娠中絶を経験したことがある当事者だ。「私個人としては、人工妊娠中絶は女性の権利として守られてほしい。子どもの命はもちろんすごく大事だし、生みたいと思う人が経済的な懸念から中絶するとしたら、それは日本の子育て支援に問題がある。自分の体を守ることや、どういう事態が起きるかわからないまま、機能として妊娠はできてしまう。私も妊娠、出産してすごく思ったのは、出産は自分の人生の時間をものすごく捧げないといけない状態になること。子どもが欲しい人からすれば、すごく愛おしい時間かもしれないが、その妊娠が意にそぐわないものだったとして、それを生むまで時間を捧げなさいというのは、かなり酷」。
望んだ妊娠でも、約40週と言われる妊娠期間は女性にかなりの負担を与える。これがさらに望まないものだとすれば、その肉体的・精神的に負担はさらに大きくなるという。その上で、人工妊娠中絶を担当する婦人科医たちに対しては「今の状況で、もしちゃんとした医師が中絶できなくなったら、地下に潜って、危険な状況でやらないといけなくなると思う。私は人工妊娠中絶をしている医師には感謝している」と述べた。
また望まない妊娠について、男性側のリスクのなさも追求した。「男性に課させるものが、あまりない。例えば日本でもコインロッカーに子どもを捨ててしまう事件があっても、名前が報道されるのは女性だけ。精子を放出した男性を見つけ出して罰するということはしていないから、すごく男女の非対称性が出るトピック。だから人工妊娠中絶を、男性にあまり声高に言われることにも、女性としてちょっと納得できないところもある」と加えた。
近畿大学・情報学研究所所長の夏野剛氏は、鈴木鈴美氏の語る男性の責任に対して、さらに述べた。「この話は、本当に男だけがラッキーをしている世界。無責任な人が多い。少なくともDNA検査で父親は特定できるようになったのだから、まずやるべきは子どもが生まれた時に、生物学上の父親を国が徹底的に追いかけて、経済的な支援も含めてオブリゲーション(義務・責任)を背負わせること。それをしてからじゃないと、女性にだけ中絶を認めないみたいなことを、男性に語る資格はない」。
(『ABEMA Prime』より)


