■何をもって「失敗」と呼ぶのか?
ispaceとしては2度目の挑戦になるが、これまで日本では、宇宙開発における「失敗」について、厳しい意見が飛ぶケースも多かった。2023年2月、H3ロケットの打ち上げが中止になった際のJAXAによる記者会見では、記者が「意図しない異常による中断は失敗と言うのでは?」という質問に対し、JAXAは「ロケットは安全に止まるように設計、その範囲内で止まった。想定内の話で、失敗とは言い難いと思う」と回答。それに対して記者は「それは一般に失敗と言います」というやりとりがあり、話題になった。
鈴木氏は「失敗と言われると、萎縮して次のチャレンジをしなくなってしまう。そういうのはよくないというのが、袴田さんの言いたかったことだろう。当然、民間企業だから失敗だというと、その企業のイメージやレピュテーション(評判)、株価にも反映されてしまう。本当に何が失敗なのか、定義をもう一回し直さないといけない」とコメント。「イーロン・マスクもファルコン9を作るまでに6回ぐらい失敗している。火星に向けたスターシップも何度も失敗しているが、その度に次に新しく何をすべきかわかったとチャレンジして、完成に近づけている」とした。
また、2ちゃんねる創設者のひろゆき氏も「打ち上げに関して、絶対失敗しないものを作ったとしても、いろいろな条件で失敗する。なので、想定していない失敗を見つけられたことは、むしろ発見だ。人が乗っていないうちは、いくらでも失敗するべき」と表現。弁護士の南和行氏は「H3ロケットの記者会見は、本当にダメな日本の足の引っぱり文化だ。すごく高度な専門性を要求されることについて、素人の発言権がすごく強くなっているのも日本の足引っぱり文化だ。素人が言う失敗やダメだったというものは、非常に情緒的で瞬間的だ」と述べていた。
ジャーナリストの佐々木俊尚氏は、基礎研究の重要性について触れた。「ゴールの実用性を求めすぎると、基礎研究が成り立たない。基本的に研究は、目的がなくても新しい科学的発見があることを望んでやるもの。その結果、何に使えるかが起こる。実用性がないから、目的がないからダメだというと、科学の発達には全くよくない」。さらに「失敗」の捉え方については「今回の件で言えば、月着陸という目標があって、そこに向かって1歩でも前進していれば失敗ではない。同じことを繰り返すのが失敗だ。また、完成した何かのシステムがあり、そこで間違った運用をするのも失敗だ。私は昭和の人間だが、そのころはもっとアグレッシブな人も多かった。20世紀の終わりぐらいにだんだん完成形に近づいて、社会もデフレ停滞になり、出来上がった日本社会で、過不足なく運用するのが一番大事と変えたがらない、減点主義に陥った結果だ」とも指摘していた。
(『ABEMA Prime』より)


