■「対象職種の枠組み」が今後の課題に?

石田郁子氏
拡大する

 石田氏は、日本版DBSの不十分な点として、「対象職種」の狭さを挙げる。1日1時間以上、子どもと接する職種全てへ拡大するよう求め、個人事業主が対象外なのは問題とも考える。また、「犯歴の照会期間を無期限に」、永久に子どもに関わる業務に就けないようにすべきで、加えて「示談」「起訴猶予」「民事での性暴力認定」も照会の対象にすべきだと主張する。

 また現状の枠組みでは、フリーランスは対象ではないことも指摘し、「大企業であれば、防止策を取れるかもしれないが、中小企業では厳しい。無犯罪証明書を本人に取らせる仕組みなら、個人で行える。フリーの家庭教師でも、保護者が証明書を確認すればいい」と意義を強調した。

 ではなぜ、日本版DBSでは、無犯罪証明書が採用されなかったのか。石田氏は、「国の有識者会議で、なぜか『個人情報保護法の趣旨に反する事態が生じかねない』『結果を把握する必要がある事業者に限るべきだ』という結論が出た」と説明する。

 これに対し、海渡氏は、照会期間の長さに疑問を持つ。「刑法では、一定の犯罪を犯して、10年たったら刑の言い渡しが消滅する。『10年やらなければ再犯はまれだ』との考えに基づいている。性犯罪は特別に20年と定められたが、『20年なにもなかった人』を制限し続けるのはバランスを欠いている」。

■DBS先進国のイギリス
この記事の写真をみる(4枚)