そんな母親とともに、依頼者がいるスタジオへ。ピアノの前に立つ依頼者は、到着した母親のほうを向いて次のように話す。
「ママ、今日は来てくれてありがとう。もうすぐで左目を取っちゃうから、その前にしっかり本物の目がある状態で、ママの好きな曲を今から歌いたいと思います。できるだけ目を開けて歌えるようにように、ちょっと閉じちゃうかもしれないけど、頑張ります」
痛い目を必死に開きながら、歌曲『おんがく』を歌う依頼者。
『かみさまだったら みえるのかしら かみさまだったら みえるのかしら みみをふさいで みみをふさいで おんがくを ながめていたい ながめていたい 目もつぶって 花のかおりへのように おんがくに かお よせていたい』
堂々と歌い終えた後、さらに依頼者は「『ちゃんとした体に産んであげられなくてごめんね』って言ってたけど、それをお母さんのせいだなんて思ったことは1回もないし、むしろ愛情いっぱいに育ててくれるお母さんのところに生まれてこれてよかったな思ってます」との思いを、涙とともに伝える。
これに母親は、依頼者を抱きしめながら「ありがとう、いつも元気でいてくれて。私も親になれて、本当によかったよ」と返していた。
眼球摘出という状況を受け入れる娘の前向きな力強さ、それを見守る母親の深い愛情に、立ち会ったせいや探偵もスタジオも、涙と感動の拍手に包まれていた。

