【写真・画像】女性差別撤廃委への異例の対応は“損”? 保守系団体へのアピール? 専門家が解説 1枚目
【映像】「皇室典範の改正」は目立たぬよう “配慮”されていた?(実際のレポート)
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 国連の女性差別撤廃委員会が皇室典範の改正を勧告したことで、日本政府がとった「拠出金を撤廃委に回さない」「委員会のメンバーを日本に招いて意見交換をするプログラムの取りやめ」という対抗措置。

【映像】「皇室典範の改正」は目立たぬよう “配慮”されていた?(実際のレポート)

 SNSでは、この対応に非難の声が相次ぐ一方で、国連による内政干渉だとして「国連脱退」というワードがトレンド入りした。

男女平等が進んでいる国も“ダメ出し”される

ICUの橋本直子准教授
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 国際法が専門で女性差別撤廃委員会に関わったこともあるICUの橋本直子准教授は、今回の対応について「日本として損をしている」と指摘する。

「日本として損をしてしまったのではないかと思うのは拠出金の使途云々よりも、やっぱり委員会の方々の訪日だ。それをキャンセルしてしまったことの方が国際的にも国内的にも日本が今回国益を損ねてしまっただろうと強く思っている」

 勧告に反発した人にとっても、委員の訪日プログラムは日本の現状を伝える絶好の機会だったという。

「どれだけ皇室典範というものの改定が難しいとか、いろいろな難しさを委員会の方に日本に来てもらって感じてもらって説明すればよかった。また、遅々としているかもしれないが20年、30年前と比べたら日本における男女平等は少しずつ進んできた。そういった日本における進展を委員会の方に肌で直接見て頂く機会も今回日本側から放棄してしまった。やはりオンラインだけではわからない部分はたくさんある」(橋本准教授、以下同)

 皇室典範の勧告については、レポート内には“ある配慮”も見て取れたという。

「特に頑張ってほしいものは箇条書きにしてある。箇条書きは『早くせんかい』というノリだ。皇位継承の部分については箇条書きになっておらず、実はあまり目立たなくしてくれていた」

 そもそも男女の完全な平等を達成することを目的とし、1979年に国連総会で採択された女性差別撤廃条約。日本は世論の後押しから、1985年に国会が批准することを承認し、女性差別撤廃条約に国として同意するために、男女雇用機会均等法もこの年に制定された経緯がある。

「日本が自発的に、誰から別に命令されたわけでもなく国内の民意に基づいて1985年に条約に入って委員会の役割を自発的に受諾したため、ある意味今回は日本自体が日本の過去の民意に反対しているような形になってしまっている」

 その上で、委員会の存在についてこう説明する。

「女子差別撤廃委員会は、例えば北欧諸国など日本から見るとずいぶん男女平等が進んでいるような国に対しても、ある意味ダメ出しをしている。ちょっと耳が痛いことを言われたから外交措置をとるというのは聞いたことがない。どこの国にも100点はつけないという意味でも削除を求めたり“お仕置き”のような対抗措置を取るのは、中身が云々の話は置いておいて、人権条約とはどういうものなのか、締約国である日本と人権条約、あるいは人権条約体(委員会)との関わり方がどうあるべきか、基本がわかっていない気がした」
 

「国内へのアピールの側面があったのではないか」

政治学者の佐藤信氏
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 橋本准教授は「『勧告』や『審査』というと強い言葉に聞こえるがあくまでアドバイスやサジェスチョン。意見交換をするのが大事、今回の対抗措置はお門違い」としている。

 政府の異例の対抗措置について、政治学者の佐藤信氏は「国内へのアピールの側面があったのではないか」と指摘する。

「皇室典範の部分だけがとりわけ重要だったのだ。政府としても委員会となかなか信頼関係が築けないということもあったとは思うが、意見書が過去出てきた中にこういうことが書かれていて、それによって『女性天皇を可能にするみたいなことを言ったんじゃないか』ということに対しては、保守系の団体からもかなり反発が上がっていた。とりわけ保守系の団体を背後に持つような自民党の中の議員たちの中には、これに対する問題意識はもちろんあったと思う。対抗措置が一つの国内的なアピールのポイントになっていた側面はやはりあると思う」

 さらに今回の措置については「国際協調のリーダーとして活躍しなきゃいけない日本においてすごく残念なこと」と懸念を示した。

「これまでメインでいたアメリカが国際機関から離脱するような動きをして、特にポピュリスト政権があるようなところはトランプ政権に倣うような形で離脱をする国々が出てきている。だから日本としてもやりやすかったと言うか、やることがそんなに目立たなくなっている事情もあるとは思う。トランプ政権が再度誕生してこういう流れが広がっていく中、日本が中心となって国際協調を進めていくという流れがこれまであった中、日本においてもこういう形で響いてしまうのはすごく残念なことだ。今後はしっかりと基盤を作っていかなきゃいけない」

 国会議員もXで以下のような様々な反応を示している。

「国連委員会の皆さんに、西暦2025年より長い皇位継承の歴史(皇紀2685年)を教えて差し上げてください。お話にならない」(自民・木原稔衆院議員)
「これは日本の権威・レピュテーション落とすだけの結果に終わると思います。早期の撤回を求めていきたいと思います」(立憲・米山隆一衆院議員)

 佐藤氏は「(皇室の問題は)最終的には国内で議論しなきゃいけないことだ」と指摘した。

「『日本国に昔からある制度だ』と言う人たちにとっては、国際的にこういうトレンドです、とかは特に意味を持たない。やはり今後コミュニケーションをどのようにしていくかに関しては、最終的には結局国内で議論しなきゃいけない。『女性・女系の天皇を認めるべき』という話自体は、すでに小泉政権の有識者会議の時点からも出てきていて、国内の議論は進展している。そもそも天皇は基本的人権が認められていない存在であり、その立ち位置をどうするかということも含めて、なかなか国会でも議論が進まない状況だが、一応動いてはいる。こういうところをしっかり盛り上げていくことがまずは重要なのではないか」
(『ABEMAヒルズ』より)

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