■血液型関係なし!誰にでも輸血できる「人工赤血球」

人工血液の作り方
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 「輸血」と聞けば、「献血」によって集められた血液が、けがや手術などによって出血した人にされるもの。血液型によっては、全く同じタイプでなければ輸血できないケースもあるため、緊急時であれば血液型のクロスマッチの時間すら惜しい場合もある。酒井氏は「クロスマッチには結構時間がかかる。(人工赤血球)なら、このクロスマッチが必要なく、即座に投与できる。備蓄もできるので、もしかしたら使うかも知れない状況に置いておけばいい。救急車はドクターヘリなどだ。受傷現場に行って出血しているようであれば、即座に投与すれば救命効果が上がる」と効果を説明した。

 なぜ人工赤血球が誰にでも投与できるのか。それは「血液型がない」からだ。血液型を決める『抗原』は、赤血球の表面にある膜にある。輸血した血液が4週間ほどしか保存できないのは、この膜が弱くて壊れてしまうからだが、人工赤血球はその中のヘモグロビンだけを取り出し、濃縮してから抗原がない人工の膜で包む。よって、どの血液型を持つ人に対しても輸血ができるということになる。

 弱点がないわけではない。緊急時の輸血に際しては頼もしい人工赤血球だが、あくまで“つなぎ役”として活躍するものだと酒井氏は言う。「室温で2年間、冷蔵で5年間長く保存はできるが、投与した後に機能する時間が本物の赤血球に比べて短い。輸血するまでのつなぎだ」。それでも医療現場で期待する声は大きく、日本赤十字社に30年以上勤務する神戸学院大学准教授の坊池嘉浩氏は「私たちはすごく期待を持って拝見している。非常に重要な製剤になると考えている」と述べた。

■課題は臨床試験、そして資金不足 実用化は「2030年か、それ以降」
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