■課題は臨床試験、そして資金不足 実用化は「2030年か、それ以降」
実用化に向けた研究、開発のハードルもある。人工赤血球は医薬品にあたり第1相、第2相、第3相と3段階の臨床試験をクリアする必要があり、ここを経てからようやく承認申請に進む。酒井氏は「まだ第1相の段階に入っているところ。今は健常な成人男性に投与しているが、安全性が確認されたら次は患者に投与する。安全性と有効性を見るプロセスを経なければいけない」とした。また大きな問題点となっているのが、研究資金だ。「なかなか企業がついてくれない。大きな製薬企業などがついてくれず、あまり資金がない。幸い国が、こういう製剤は必要だろうと研究費を出してくれている。ただ企業は、日本国内だけだと需要がそんなに大きくないという判断だ」と、資金援助が受けにくい理由も述べた。
コストにおいても、日本赤十字社から輸血するには古くなって廃棄される血液を購入、そこから赤血球を取り出すだけに、無料で集まる献血に比べれば、製造プロセスがある分だけコストもかかる。医療現場としては待望の製剤だけに、酒井氏も「今は本当に限られたメンバー、小さなグループで治験を進めている。開発資金が投入されれば、非常にスピードが上がる」と訴えた。現在のペースであれば、臨床試験をクリアし承認申請、実用化されるのは「2030年か、あるいはそれ以降か」というところだと語った。
(『ABEMA Prime』より)


