■動物愛護法は2012年、2019年と2度改正
動物愛護法は2012年にも改正(施行は2013年)されている。この時は、愛護動物を殺傷した場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金だったところが、それぞれ2倍の2年以下・200万円以下へと引き上げられた。そこからさらに7年後の2019年、現在施行されている5年以下・500万円以下に。2013年からの12年で見れば、1年以下・100万円以下から5倍の重さになっている。動物虐待の罰則強化に取り組む、公明党代表代行・竹谷とし子参議院議員は「5年前の改正の時も罰則を厳罰化するということでやってきたが、それも必要だし、兆候が見えた時に通報しやすい体制作りも並行して必要だと思っている」と述べた。
罰則は強化されたものの、動物虐待事件の検挙件数は法改正後の方が増えており、2014年が48件なのに対し、施行された2020年から急増、2023年は181件を数えた。弁護士・島昭宏氏は「動物への関心が高まってきたり、虐待というものに対して嫌悪感が高まってきた。それから法定刑が高くなって、警察もその犯罪に対する意識が変わってきたことがあって増えているというのはあると思う。虐待というもの自体が本当に増えているかというと、この検挙数とは別の問題」と説明した。
かつて動物は“モノ”として扱われ、法定刑についても器物損壊として比べられるような時代もあった。島氏は「2012年の改正で、上限が1年から2年と倍になった。それが2019年に2年が5年になった。2回連続で厳罰化されて、しかも2.5倍というのは極めて特殊な例だ。それだけ国民の意識が高まって、法定刑を上げてもいいなという状況になってきたということの一つの表れであることは間違いない」と、現状を前向きに捉えた。
一方で、海外であれば実刑で10年を超えるようなケースもあり、まだ日本では実刑になるケースもほとんどないと言われる。島氏は「警察から見ても(懲役)3年にならなければ『執行猶予になる事案だな』と最初から思っていて、極めて軽い犯罪という扱いがあった。それが5年になることで、れっきとした犯罪という言い方はおかしいかもしれないが、ちゃんと扱わなくてはいけない犯罪なんだというところに、ようやく立った。警察の意識もこれを機に変わっていきつつある。器物損壊罪よりも高くなったのだから、モノではない何か、尊重するべき何かになったなということは、数字に表れている。これは国民の意識がどんどん変わっていくまだ過程だ。それはやむを得ないところはあるし、それをいかにもっとスピード感を上げるかという話だ」と述べた。
■人と動物が共生することの意味合いは
