そんな峻嶮な山道の先、尾根近くの急斜面に見えてきたのは、美しく剪定された生垣だった。出迎えてくれたのは「いつか(番組が)来るんじゃないかと、地元のみんなから言われていたんです」と元気に話す80歳の男性だった。畑とお墓を守るように植えられた生垣は防風林で、自身で手入れをしているのだという。
20年前に妻を亡くして以来、この地で一人暮らしをしているという男性。祖父の代に始めたというミカン畑には、早生ミカン、デコポン、ポンカン、晩柑など多彩な種類のミカンが育てられている。ミカンをもいでは捜索隊に振る舞いながら、育てたミカンを親戚や知人に送るのが何よりの喜びだと話してくれた。
また、小学校は4キロ先で通学には山道を1時間以上もかけたという話や、中学卒業後には家業を手伝いながら、東京まで船と機関車を乗り継ぎ24時間かけて出稼ぎに出ていたというかつての過酷なエピソードも語られていく。木から落ちて大ケガを負った際には、救急車を呼んだものの、迷って家までなかなかたどり着けなかったこともあったそうだ。
ポツンと一軒家の主「やっぱり住み慣れたところがいいんです」
