■心神喪失者は罪に問われず
「心神喪失」とは行為の良し悪しや判断が全くできない状態、「心神耗弱」はその判断が著しくつきにくい状態を指す。刑法第39条では心神喪失者の行為は罰しない、心神耗弱者の行為はその刑を減軽するとされている。この判断能力が刑事責任能力へとつながり、正しい判断が全くできない心神喪失者がたとえ殺人をしても、無罪になるというのが現在の法律だ。殺人事件などで加害者の精神鑑定も行う精神科医・岩波明氏は鑑定方法について「問診を重ねたり記録を取ったりするが、精神科ではこの検査をやれば絶対に診断がつくというものはない。(鑑定は)かつては1年やそれ以上かけていた時期もあったが最近では2~3カ月くらい。ただし重大事件などであれば半年かけるものもある」。
「精神」という目に見えにくいものを診断するだけに困難だと思われがちだが、現場の感覚は違う。心神喪失、心神耗弱である人は「精神科医にとって90%から95%ぐらいは明白なケースが多い。問題になるのは一部の特殊なケースや大事件。重大事件においては社会的ないろいろな意見もあり、それを裁判所や検察が考慮する。そのために判定が揺れる、いろいろな診断が出るケースはある」と述べた。
重大事件でなくても鑑定結果が揺れる問題は常にある。「たとえば検察側と鑑定を頼まれた医師との阿吽の呼吸みたいなものは実際にあり判断も検察側に近くなる。逆に弁護側が頼む場合は(無罪にするため)何が何でも心神喪失にするような問題がある鑑定書が出ることもある。出された鑑定書を検証するシステムがなく書きっぱなしで終わることが大きな課題になっている」。
実際に心神喪失・心神耗弱状態にある人はどんな状況なのか。「いわゆる精神病、統合失調症の場合はそのほとんどが被害妄想と、それに伴う幻聴だ。自分が世界から迫害される、嫌がらせを受けることへの反発で『そんなことをされるなら逆に自分が相手を殺す』というように幻聴に支配されるケースが多い」と語った。
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