朝倉の復活劇のキーマンとなったのが、朝倉のセコンドを務めた寝技コーチの竹浦正起だ。竹浦はブラジリアン柔術の黒帯で、全日本王者にも輝いている日本トップレベルの柔術家。その技術はもちろん、オンラインでの柔術・グラップリングの教則教室を運営し、教則本を出版するなど指導力にも定評がある。鈴木戦は朝倉の組み技・寝技のレベルアップが勝因となったわけだが、竹浦は平本戦後から朝倉に柔術を指導し、平本とのリマッチに向けて寝技の指導を続けてきた。竹浦が朝倉に指導したのは寝技の基礎中の基礎、竹浦曰く「白帯のクラスで教えるようなこと、キッズ柔術で教えるようなこと」だという。
「平本戦が終わったあと、去年の9月に未来さんが柔術をやりたいということで、はじめは道衣を着た練習、柔術を教えていたんですね。そのなかで未来さんが平本選手とMMAで再戦することになり、そこからはMMA用のグラップリング・寝技を指導するようになりました。元々未来さんはポテンシャルは高かったのですが、動きそのものがラフというか、雑なところが多かったんです。技術的に理解して動いているというよりも、何となくやって動いて上手くいっているという感じでした。だからまずは寝技を練習する機会と時間を増やしました。僕が教えていた内容も白帯の子に教えているようなこと、それこそキッズ柔術の生徒に教えているような基礎の基礎を教えました。みんな複雑なことや難しい技を覚えようとしますが、一番大切なことは基礎を覚えることです」
そして竹浦は朝倉を指導する上で二つの才能を感じていた。それが教えた技術の応用力と地道に寝技の練習を重ねる努力だ。
「未来さんは頭もいいので、基礎を教えるとそこからどんどん技術をつなげることが出来るんです。僕は寝技の基礎を教えて、ちょっとしたアドバイスしただけで、あとは未来さん本人が自分で強くなっていった感じです。僕は未来さんが強くなる機会を提供しただけだと思っています。よく打撃はセンス、寝技は努力と言われますが、寝技の技術が向上したのは未来さんの練習量の賜物だと思います。よく僕も『週何回教えてください』とか『こういう技を教えてください』と言われることが多いのですが、それでは強くなることに限界があるんです。でも未来さんは毎日(寝技を)練習したいと言ってくれて、だったら僕もとことん付き合いますと。毎日練習すれば強くなることは分かっているし、未来さんはそれをやったわけです」
今大会では朝倉と同じフェザー級でラジャブアリ・シェイドゥラエフがクレベル・コイケにKO勝利して王座が交代。朝倉はシェイドゥラエフ戦について「よくアンチに『誰々から逃げるな』と言われますけど、俺は逃げたことがない。相手にビビることもないんで、誰とでもやりますよ」と意欲を見せ、平本へのリベンジについても「ボコボコにしたい。もう一回やったら勝つ自信がある」と語っている。
朝倉の今後について「未来さんは復活じゃなくて、進化して戻ってきた。これからもっと進化すると思います」と竹浦。RIZIN男祭りは朝倉未来の復活の舞台ではなく、新たな進化の始まりとなった。
文/中村拓己
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