萩原と言えば鋭い打撃が最大の武器だが、その打撃を封じられてグラウンドに持ち込まれると手も足も出ない、というのが負けパターンとなっていた。しかし西谷戦では西谷のタックルでテイクダウンを許しても立ち上がるなど、西谷のテイクダウンに対応する姿を見せた。最大の弱点であった組み技・寝技の対策をはじめ、TRIBE TOKYO M.M.Aではどんな練習を積んできたのか。長南代表は技術練習だけでなく、試合に向けての準備の部分から指導したという。
「(組み技・寝技強化として)本当に基礎から教えました。萩原はうちに来るまで色んなトップ選手たちのところで練習していたんですけど、そういった練習をするために必要な基礎がないまま応用を学んでいるような状態だったんです。だから基礎が出来ていないのに『なんでそんな技を使えるの?』みたいなことがあったり、高度な技は知っているんだけど使いこなせていなかった。だからうちでは基礎から教えて、その間を埋めるとこから始めました。
打撃に関してもセンスはいいんだけど喧嘩寄りのスタイルで、技術というよりもスパーリングで(スタイルを)作っている感じだったんですね。だからテイクダウンを混ぜられたり、駆け引きされるとやられてしまう。また多少被弾してもOKという考えでしたが、その考えだったら外国人選手には勝っていけないよと言いました。
あとは試合までの作り方ですね。萩原はプラス思考すぎるから『組んでくる相手とどうやって戦うのか?』となったら『組まれる前にぶっ飛ばせばいいんですよ』となっちゃうんです。良くも悪くも自分がやられることや劣勢になることを考えていない。そこから目を逸らして“やるかやられるか”の試合をして、それでやられたらしょうがないという考えだったので、その部分も変えましたね」
またTRIBE TOKYO M.M.Aには選手のフィジカルトレーニングやコンディショニングを担当する堀江登志幸トレーナーが在籍し「堀江さんは選手それぞれの体の特徴を見抜いて、個別にサプリメントや減量のアドバイスをしてくれるんです。萩原には萩原の特徴があって、萩原に合った減量法を指導してくれました。本人的にも今までよりも全然いい状態で試合が出来ていたと思います」と万全の仕上がりで萩原をリングに送り出した。
まさに会心の勝利に見えた西谷戦だが、長南代表は「決して100点の試合内容ではなかった。萩原本人も自分たちも何もさせずに勝つことを目標にしていて、西谷選手が組んで来たら逆にこっちがテイクダウンして寝技で極めるつもりで、全局面で上回ることがテーマだった」とより高い水準の勝利を見据えて試合に取り組んでいたという。
当初、今大会では朝倉未来と平本蓮の対戦が予定されていたが、平本が負傷欠場。朝倉の対戦相手が調整中だったタイミングで萩原は朝倉との対戦をアピールしていた。最終的に朝倉は鈴木千裕と対戦することになり、朝倉は鈴木からTKO勝利を収めた。もちろん萩原自身「(朝倉が)自分から少し遠のいてしまいましたけど、自分はまた勝っていって、そのカード(朝倉戦)を実現させるだけ。待っとけよって感じです」と朝倉戦を諦めたわけではない。長南代表は今後の萩原のキャリアについて「俺も萩原がどこまで強くなるのか楽しみ」と期待を寄せている。
「今まで萩原は戦績を気にしていないところがあって、勝ち星を少しずつ積み重ねていくという考えがなかったんです。戦績が負け越しているのも、俺からすると不必要な負けが多いんですよ。今は自分がトレーナーとして試合を組む側にもなって、萩原本人と試合について話すし、戦績を綺麗にすることも必要だと思います。次はもう少し上にいる選手とやって、それこそ大晦日に朝倉選手と戦えるくらいまで持っていきたいです。今の萩原はまだまだ作っていけるところがあるし、今回よりも次の試合の方が間違いなく強くなると思うので、俺も萩原がどこまで強くなるのか楽しみですし、期待しています」
萩原京平の再生ロード、そして朝倉未来への道は東京ドームから始まったばかりだ。
文/中村拓己
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