■閉鎖空間で常に子どもと1対1 悩む母たち

高尾美穂氏
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 高尾氏が語る産後うつの大きな原因は、母親が子どもと1対1で向き合い続けることの苦しさだ。「赤ちゃんが小さい時期は病気をさせてはいけないと外出せず、閉鎖空間にいることも多い」。ミカさんは「一番大きかったのは人に頼れず、自分で子どものことを全部やらなければと思って、助けを出すのが遅かった。弱音を吐き切れなかった分、時間がかかってしまった」と振り返る。

 義母からは産後に手紙で「赤ちゃんは四六時中泣いて大変だと思うが、その都度お母さんが泣いたり、うるさいと思うと敏感に察知するので、いつも穏やかな気持ちで察してあげて」と伝えられた。ミカさん本人は「なんていい言葉だろうと感動して、心に留めていた」ものの、これがかえってプレッシャーになり「いつも気持ち悪いぐらいの笑顔で子どもに接していたが、気負い過ぎだった」という。「(周囲から)天使の寝顔を見ると吹き飛ぶよね、などと言われるとしんどいと言うこともできず、どんどん孤独感を強めていった」。

 高尾氏も母親が背負うものの大きさを指摘する。「よく『お母さんは太陽だ』とも言うが、それもしんどい。一番小さくて手がかかり、見守っていないと命を落とすことすらある時期に全責任を負って、自分のいろいろなものを削りながら過ごしているのに、しんどいと言えない。やはりつらいと周りに言えることがすごく大事だ。家族の中だけで解決しようとしないこと。たとえば親、自治体、専門家など、どこかに手を挙げてみてほしい」。

■ポイントは「子どもと距離を置く」
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