WRC(世界ラリー選手権)の2025年第5戦がポルトガルで開催。競技2日目に日本人ドライバーの勝田貴元(トヨタ)が見せた奇跡的なクラッシュ回避テクニックが中継でも注目される一幕があった。
競技2日目(現地時間16日)デイ2の戦いの舞台は、ポルトガル北西部の山岳地帯。トヨタの5連勝を阻止したいヒョンデのアドリアン・フルモーは今大会ここまで絶好調で、SS8開始時点で総合2位につけていた。
しかし、このフルモーがスタートから約7.5kmの地点の左ヘアピンコーナーでスピンを喫してしまう。しかもフルモーの乗るヒョンデ i20 N ラリー1は、コーナー出口のコース真ん中で後方を向いたまま停車。どうやら岩にヒットして左フロントアームを破損してしまったようで、フルモーら乗員は降りたものの、マシンは動かすことができない。
すると、すぐに後方を走っていた勝田のGRヤリスが迫ってくる。一応、コーナーの入り口でマーシャルが知らせようとしてはいたものの、ヒョンデのマシンはコースの真ん中に止まったまま。しかしここで勝田は、アウト→イン→アウトが定石のコーナーのラインを、アウト→イン→インで、わずかマシン1台分しかなかったヒョンデの真横を駆け抜けた。
実況担当の布施宏倖氏も(リプレイ映像ということで)このシーンの結末を知っているにもかからわず、「ギリギリのところを通過! 危ない!」と思わず絶叫。解説の竹岡圭氏も「よく抜けましたね……」と唸り、「コーナーを抜けたところでイン側に避けるのは困難。スピードが多少落ちてるとはいえ、あのラインを通るのはかなり難しいと思います」と勝田のテクニックを絶賛した。
フルモーはこのままデイリタイアとなり、勝田はSS8終了時点で総合2位に順位を上げた。奇しくもトヨタとヒョンデの今季のマシンの調子を推し量るようなシーンとなった。なお、勝田は同18日までの全日程を終え、総合5位でフィニッシュしている。
(ABEMA『WRC 世界ラリー選手権 2025』/(C)WRC)
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