■「紙切れ1枚で悲しい思いしなくて良かった」
大阪府に住むさやかさんは、生まれてから24年間、戸籍がない状態だった。初めて知ったのは、中学3年生の頃で「高校受験のときに住民票を市役所に取りに行ったら『あなたは戸籍がありません、日本人でもなくて存在してません』ってサラッと言われ、すごくショックで泣いたのを覚えている」。
存在していない理由は「嫡出推定」というルールだった。離婚から300日以内に生まれた子は、たとえ新しいパートナーの子であっても戸籍上は「前の夫の子」になってしまう。そのため、さやかさんは出生届を提出されず、無戸籍になってしまった。
戸籍がないことで彼女は苦難の人生を送ることになった。当時、交際していた男性との間に子を妊娠するも無戸籍がゆえ結婚ができず。挙句の果てには「相手の母親に大切に育てた息子を籍がない女が騙したみたいなことを言われた。罵られて、すごく傷ついたというか、もう本当に自殺しようかと思った」。
男性とは別れ、子供が誕生するもその子も無戸籍となった。このままではダメだと思い、弁護士に依頼することに。手続きから約半年、遂に戸籍を取得することができた。「ちゃんと戸籍があれば違う人生を歩んでいたかもしれないって今でも思う。紙切れ1枚でこんな悲しい思いをしなくて良かったなと」。
■「中卒で職も転々…」29年間、無戸籍で過ごしたユウさん
