■JAが価格決定権を持たない構造に問題?

 価格決定権を持っているのは、JAに出荷する場合は小売店、JAに出荷しない場合は農家と小売店にある。

米を収穫してから消費者に届くまで
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 ヤマモト氏は、「農協の仮渡金は非常に安くて、農機具の更新ができなかったり、肥料や農薬の高騰でだんだん離れる農家が増えてきたのは事実だと思う」とコメント。また、収穫した米をJAに一切集荷していない理由について、「小売業に直接売っているが、農協に出すよりも7000円/60kgぐらい差があり、4割ほどプラスになる。小規模農家や生産した米の出し先に悩む農家にとって、農協や集荷業者は大切な存在だと思うが、私ら大規模農家はその金額だとやっていけない」と明かす。

 また、“令和の米騒動”が起きた背景として、「今年は全国的に、本当に米がなかった。出せる米がない中で、価格が安い農協には集まらない。卸が直接生産者に買いに走り、高値で買ったことで、令和の米騒動が起きた」との見方を示した。

 仮渡金について高橋氏は、「JAが金額を決めるが、他の農産物と違って米は1年に1回しか穫れない。“売れたら生産してもらう”のが一般の流通だが、1年を通して食べる消費者のために保管して、先にお金を渡すのは必要な機能だ」「米がいっぱい穫れたら相場が下がって豊作貧乏になるし、相場が高い時は不作の状態。農家の収入は収穫量×単価なので、どちらにしろ経営が安定しない。仮渡金は相場全体との釣り合いで決めるが、それはJAの問題というよりは、経済の仕組みとしてお金を持っている買い手のほうが強いことにある。JAも高い概算金を払いたいが、それをすると今度は売りっぱぐれてしまう」とした。

 進藤氏も「卸業者と農協の間に相対取引価格というものがある。卸業者の人たちも消費者の動向を見て、“これぐらいの価格だったら売れる”と決めるわけだ。その相対取引価格から手数料が引かれ、最後に農家に概算金として来る」と説明した上で、「去年、今年で違うのは、他の所に売って価格が上がってきて、農協もある程度上げないと集まらなかった。おそらく1万8500円〜2万円/60kgぐらいで、地元の秋田は2万4000円/60kgと春先から宣言している。相対取引価格から決まってきたのが、今回の事象を踏まえて出荷側から決まりつつある」と述べた。

■JA全中「『JAが意図的に価格を上げている』ことはまったくございません」
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