■将棋AI「Ponanza」で有名に
山本氏が将棋AI「Ponanza」で有名になったのは2013年から。将棋のプロ棋士に初めて勝利すると、2017年にも佐藤天彦名人(当時)に勝利。最も歴史あるタイトルの保持者に勝利したことで、将棋界においては「AIは人間を超えた」ことを決定的なものにした張本人だ。当時の思いについて山本氏は「将棋の時は強化学習で、自己対戦によって人間が知らない戦法や手筋を発見してきた。こんなことが起きるんだという感動があった」と振り返る。
当時の名人に勝利したことでPonanzaの“引退”を表明した山本氏が、次に挑戦したのが自動運転の世界だった。2021年に起業した「チューリング」では、カメラと生成AIを活用し、将来的には人間が全く運転することがない「完全自動運転」を目指している。ハンドル、アクセル、ブレーキなど全ての操作をAI管理のもとに行うもので、ハンドルすらいらなくなる完全自動運転は、世界でもまだ実現した例がない。
生成AIと自動運転の関係について山本氏は「これまではセンサーをたくさん使うとか、運転の仕方を人間がプログラムで書いて、ルール通りに動かすというものがすごく多かった。我々はそういったものを全部排除して、カメラ映像からニューラルネットワークでいきなり車を動かそうと考えている」と語った。例を出せば、これまでは「赤信号では止まれ」と人間が書いたプログラムによって指示していたが、生成AIでは「赤信号の前では車が止まる」ことを自ら学習し、止まるようになるというものだ。「(運転レベルで)AIが人間を超えるところまでは行っていないが、将来的には人間を超えるような、ある種の“予知”はできるようになるのでは」とも語った。
■後発だからこその強み「追いかけるだけならコストはすごく安くできる」
