■突然現れた“福祉”を語る「引き出し屋」に連れ去られた被害者
「引き出し屋」とは何なのか。ジャーナリストの加藤順子氏によると、「家族から依頼を受けて社会復帰・自立支援対象とみなした人を宿泊施設に連行し、そこでの生活を強いる業者」を指す。引き出し屋が定義する対象者は、「引きこもり状態・不登校・無職・精神疾患・家庭内暴力するなどの人」だ。
被害にあった渡邉さんは、大手企業に就職したが、過労・パワハラで双極性障害になり退職。精神科医に通い治療を受けながらアルバイト生活をしていた。2018年3月、業者3人に「福祉の人間」と称し施設に連れ出されるも「拒否権なし」。着替えや携帯・財布・身分証の所持も不可だった。同年7月に施設仲間8人で脱走し、福祉施設へ避難。現在は障害年金・生活保護で一人暮らしを再開している。
引き出し屋の施設では、約50人が生活していた。携帯・お金・身分証を所持できない状態で、計算ドリルや軽い運動などと最低限の生活のみ。外出は1日1時間で、外部との通信を制限(電話禁止/SNS・メールを制限/手紙を検閲)され、脱出者の部屋は出るとブザーが鳴る仕様にされる。中には、おむつだけ渡されトイレすら行かせてもらえない人もいたそうだ。
■チャイムが鳴り、自宅に侵入してきた引き出し屋
