性的指向に合う別のパートナーは…?
そんな2人の結婚生活には、いわゆる「夫婦らしさ」を求めない心地よさがある。互いに干渉し過ぎない距離感。一方で、お互いの性的指向に合う別のパートナーはいないという。
「本当に長年会わなかった従兄弟と一緒に住むくらいの感覚。昔から存在は知ってはいたが、恋愛感情を持たないだろう人と一緒に暮らし始めたくらいの気持ち。一緒に住むことに特に違和感がなかった」(ミナトさん)
2人がたどり着いた「友情結婚」という従来の枠にとらわれない結婚のかたち。その暮らしぶりを振り返りながら、2人が今、感じていることとは。以下のように語った。
「僕は通常の結婚はできなかったと思うので、(友情結婚を)してよかった。セクシャルマイノリティの人でも、結婚という形態を取ることはできるという意味で、友情結婚が選択肢の一つになればいいと思う」(ミナトさん)
「こういう形でも結婚しなかったら、多分私も(結婚を)してないと思う。今の生活がなかったと思うと、すごく良かったと思う。恋愛に性的なことは別に必要ないと思っている人は結構いらっしゃると思うため、もし結婚したい、子どもを設けたいときに、一助になるのではないかと思う」(サツキさん)
上記を受けて『日本婚活思想史序説』著者で東京都立大学准教授の佐藤信氏は、以下のように語った。
「結婚のことを考えるときに大事なのは、社会で結婚していると捉えられることと、国家が結婚と認めること(法律婚)とは違うということ」
「私たちは、恋愛のユニット、共同生活のユニット、子育てのユニット、そのどれかでも備わっていれば、結婚と捉えることが多い。たとえば高齢のカップルで、恋愛感情も性行為もなくて子育てもなくても、共同生活を営んでいれば結婚しているといっても違和感はない。現代日本の都市部であれば、同性のカップルで結婚式を挙げたり、場合によれば子どももいたりするカップルを我々は『結婚している』と捉える。だから、恋愛や性行為がなくても、共同生活や子育てを共にしている今回の『友情結婚』を『結婚』と呼ぶことはなにもおかしくない」
「ただ、社会的に結婚と認められることと国家が認める法律婚かということとは別。今回のケースはたまたま生物学上の男性と女性だったから法律婚できた。けれども、ちょっと条件が違えば国家は法律上の結婚とは認めない。同性婚や選択的夫婦別姓は、国家がどのような(社会的には認められている)結婚を保護しようとしているかという観点からの問題。とはいえ、社会はそれとは区別して多様な結婚のあり方を考えてよい」
(『ABEMAヒルズ』より)
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