■サザエさん一家が夫婦別姓なら家族の概念が崩壊…?

 選択的夫婦別姓に反対する旧皇族出身の作家・竹田恒泰氏が主張しているポイントの2つ目が、「家族の概念が崩壊する」という点。『サザエさん一家が夫婦別姓なら』と仮定し、次のように説明する。

「磯野家とフグ田家、2つの家が同居している。例えば、夫婦別姓で磯野波平と石田フネのままの場合、現在の立民案だと子どもの姓は全員同じなので、子は全員『石田』だとする。カツオくんが花沢さんと結婚して夫婦別姓を選択し、子どもは花沢姓だとすると、磯野さんの息子が石田、石田の子どもが花沢で、これはもはや“磯野家”ではない。私は『家族の一体感が薄れる』とは言っていなくて、“◯◯宅”“◯◯家”“◯◯家の墓”といった概念がなくなる。これがどういうインパクトを持つのか。全然問題ないという人もいるかもしれないが、やってみたら問題が起きたという時の社会的影響が大きいので、よほど明確なメリットがないといけない。それほど大きな社会的コストをかけてまでやることなのかは、推進側が立証する必要がある」

サザエさん一家が“夫婦別姓”なら…
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 これに、賛成派で一般社団法人あすには代表理事の井田奈穂氏は、「国会の参考人で出た事実婚のカップルは、『お互いの氏名を尊重するために婚姻届を出せず、公正証書を作って不利益を解消しようと思ったが、法的な意味はない』と。“法的に守られた家族になりたいのに”“同じ戸籍に載りたいのに”という人は間違いなくいるわけだ。私たちの試算では、20代から50代の事実婚の人たちで、選択的夫婦別姓が導入されたらすぐにでも婚姻届を出したいという人たちは58.7万人いる。これは少ないのか」と訴える。

 同じく賛成派で、経団連ソーシャル・コミュニケーション本部副本部長の大山みこ氏は「共同親権の話も家族法制を大きく変えた一例だ。“離婚して名前が変わっても、家族は家族なんだ”ということの証だと思う。今回、選択的夫婦別姓に反対している方々が、むしろ共同親権を求めてきたというねじれた関係がある。また、3組に1組が離婚すると言われている中で、離婚後は旧氏と結婚氏のどちらを使うかを選ぶことができる。さらに事実婚も入ってきたりと、これまでにもいろいろ変わってきている中で、何か問題が起こっているのか。海外は別姓だが、三原女性活躍担当大臣が『海外の夫婦別姓で困った話は聞いたことがない』という国会答弁をされていた」と主張した。

 一方、反対派で麗澤大学教授・憲法学者の八木秀次氏は「これは、“1つの戸籍の中に2つの氏”を入れるかどうかの問題。明治民法の親族編を作る時に“1つの戸籍の中に1つの氏”とし、それを戦後も継承した。今の戸籍制度もそれが前提で、これをどうしていくのかという議論をしないと、話の中心がずれていく」と述べる。

■“事実婚&夫婦別姓”のハヤカワ五味氏「社会的コストで見れば見直す部分も」
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