アカデミアの世界はスポーツ業界と似ている?

アカデミアの世界はスポーツ業界と似ている?
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 海外と日本の処遇の差について、中室氏は次のように述べる。

「アカデミアの世界スポーツの業界とすごく似ていると思う。スポーツでは大谷翔平選手のように才能のある人がアメリカに行ってチャレンジしたり、サッカーでも海外のチームで活動したりすることはよくあるが、それと同じようにアカデミアも世界で競争している。つまり、報酬や処遇のあり方をめぐっても、海外と競争しているということだ。日本の大学は、給与の体系は年功序列で、昇格も年齢の要因が強い。実力があって現在巨額の報酬を得ている海外の研究者からみると、日本へやってきて『あなたの給料は年齢で決まりますよ』となると、多分魅力を感じない」

 J-RISE Initiativeは、海外にいる日本人研究者も招聘の対象だという。日本よりもいい環境を求め海外に行く研究者の現状について、中室氏はこのように話す。

「経済学の分野だと、若い人は海外の大学で学位を取ったり、海外の研究機関で勤務する人も多い。実力のある人ほど、自分の能力が高く評価されるところに行きたいと考えるのは当たり前。日本も、若くて能力のある人を、年齢ではなく能力に応じて処遇をするのは大事」

 同じく13日に公表された科学技術イノベーション白書では、日本の研究環境についていくつかの課題が指摘された。その中には、「若手研究者の雇用環境」なども挙がっている。

「特に若い人たちがこの状況に不安を感じるのは分からなくはない。大学は少子化の影響で子どもの数が減っているので、今後の経営環境について、特に私立大学は悪くなるのではないかと予想する人が多い。海外の研究者をたくさん招聘すると、ひょっとしたら自分のポジションが危なくなってしまうのではないか、自分が不利になってしまうのではないかと若手研究者が考えるのはその通りで、海外の研究者を招聘するかどうかとは関係なく、若手研究者の雇用をしっかり国が守っていくことがすごく大事だと思う。一方で、年長の研究者に対しては、成果に応じて報酬や処遇を決める方向に変えていったほうがいい」

(『ABEMAヒルズ』より)

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