バンカーバスターとは?

イスファハンの核施設
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━━イランの3つの核施設はどのような場所だったのか?

「核兵器を作るためにはウランを濃縮して90%以上の純度にする必要があるのだが、3つの施設はウラン濃縮に必要な工場だ。その一つのナタンズにはイランでも最大のウランの濃縮工場がある。その北にあるフォルドゥでは、岩盤の強い山岳地帯の地下80メートルから90メートルに濃縮工場がある。また、イスファハンは、ウランを濃縮するための遠心分離機を作る製造工場がある場所だ。そこでアメリカはフォルドゥには6機のB2爆撃機を使って12発のバンカーバスターを投下したと言われている。B2爆撃機はアメリカのミズーリ州の空軍基地から空中での給油を受けながら、37時間無着陸で飛んでいって空爆したようだ。残りのナタンズとイスファハンについてはアメリカの潜水艦から30発の巡航ミサイルを打ち込んだと言われている」

━━イスラエルが攻撃しづらい箇所だったからアメリカが攻撃をしたということか?

「そうだ。特にフォルドゥの濃縮工場については、アメリカの助けがなければ破壊することができないため支援を要請していた。これにアメリカが応えるかどうかが一番大きいところだった。イスラエルの要請に応えるということは、イラン国内にアメリカ軍が攻撃をかけることになり、そうなるとアメリカとイランとの直接の戦争になっていく。だから、非常に慎重にトランプ政権は見極めていると言われていた」

━━アメリカがイラン本土へ攻撃したことはどのような意味をもつのか?

「アメリカとイランには20世紀から非常に複雑な歴史がある。特に1979年以降はアメリカとイランは国交を断絶して、互いに敵国として向かい合ってきた。ただし、両者とも双方の力、そして周辺諸国に対する影響力の大きさをよく理解していたから、イランが核開発を進めていると言っても、アメリカは直接手を出さなかった。そして、トランプ政権もなんとかして核の交渉に持ち込もうとしていたが、イスラエルがイランへの直接攻撃を始めたことによって、アメリカも引きずり込まれる形になっているのだと思う」

━━地下への攻撃に使われたバンカーバスターとはどのようなものか?

「通常、爆弾は地面の表面・地表で爆発する。だがバンカーバスターは地中に深く刺さってから爆発する。イランのフォルドゥは非常に硬い岩盤の中にあり、地下80メートルから90メートルぐらいに濃縮工場が作られていると言われていた。バンカーバスターは大体60メートルまでに達すると言われているため、本当に濃縮工場に甚大な被害を与えているのかどうかは専門家の間でも今意見が分かれている」

━━一部イランメディアでは、攻撃を受けた3つの核施設は濃縮ウランを事前に別の場所に移してたと報じられているが。

「たとえ本当に被害があってもイラン側は『被害があった』と言わないだろう。ただし、イスラエルの攻撃が始まってからもう10日が経っており、その前から攻撃は予想されていた。だからイラン側が濃縮の進んだウランを別の場所に運び出して保管している可能性は大変高いと思う。そのため、今回の3つの施設に対するアメリカ軍の攻撃でイランの核開発の進捗を止められるかというと疑問が大きい」

「トランプ大統領は『戦争をしない大統領』だった」
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