「イスラエルにとっては背中を押されているところ」

中東情勢をめぐる最近の動き
拡大する

━━一方、イスラエルは今後どのように動くか?

「イスラエルとしては、自分たちの要請を受けてアメリカがイランの攻撃に踏み切ったことに大変力強いバックアップを受けたと感じていると思う。特にイスラエル国内でもイランに対する攻撃には非難があった。その意味ではアメリカという非常に強いバックアップを得てイランへの攻撃を続けられるということはイスラエルにとっては背中を押されているところだと思う。そのことがイランとイスラエルの紛争を解決に導くのかというと、イラン側の報復次第だ。イラン国内の軍事力そのものは弱まってきているとはいっても、まだ巡航ミサイルや直接イスラエルを狙えるミサイルはまだ数多く持っている。これから戦闘がエスカレーションしていく可能性はやはり高いだろう」

周囲の中東諸国はどのように動くのか?

イラン最高指導者 ハメネイ師
拡大する

━━イランの報復次第で、イスラエルとアメリカが連携を取って動いていくのか?

「そうだ。ただし、これから先の泥沼のようなところにアメリカが入っていくことはトランプ政権も避けたいと思っているはずだ。なぜなら、アメリカは2001年のブッシュ大統領の時にイラクが大量破壊兵器を持っているという虚偽の情報に基づいて大きな戦争をして、アメリカ人の兵士も多数死亡させるという非常に苦い経験をしている。トランプ政権としてもそれは避けたいのが本音だと思うが、アメリカを巻き込んで紛争が続き、もし今後イランによるアメリカの軍事施設に対する攻撃などが激しくなってくると、アメリカも抜けられなくなってくる」

━━イランは中東にあるアメリカの施設を狙うのか?

「そうだろう。イランはアメリカ本土まで届くような武器を持っていない。だが、アメリカはイラク、カタール、シリア、バーレーン、クウェート、サウジアラビアなどに軍事基地を広く展開しており、3万人から4万人の兵士が駐留している。そういったところに対しての攻撃はこれから一番可能性があると思われる」

━━周囲の中東諸国はどのように動くのか?

「中東各国としては、やはりイスラエルによるイランへの直接攻撃に対して非難をしてきた。ただし、アメリカが直接介入してくると各国は非常に態度表明が難しい。なぜならサウジアラビアなどはアメリカと強い経済的な結びつきがある国だからだ。そういった国がアメリカを一切無視してイラン支持に向かうとは考えづらい。ただし、やはり中東各国、それからイスラム圏の国としてはイランに対する攻撃はやはり非難をする国が多く出てくると思う。だから、中東の中でも“割れていく”可能性がある」

━━今後もっとエスカレートすることで日本にも影響があるのか?

「実はもうすでに影響は出ている。日本の石油は9割以上が中東に頼っている。中東から石油を無事日本に運ぶことが日本の経済を支えているのだ。だから、もうすでに石油の価格も上がっており、それに対する不安感が大変高まっている状況だ。今後もし、例えばフーシ派などによって船舶が攻撃されたり、もしくはイランがホルムズ海峡を封鎖したりした場合、日本に対する石油の輸入そのものが滞ってしまうことにもなりかねない。これも日本の産業にとっては大きなダメージになる。だから、“どこか遠くで起きている戦争”という認識ではなく、日本の経済や自分たちの日常生活に大変強く大きく影響する戦争だと感じながら成り行きをきちんと見ていく必要がある」
ABEMAニュース解説

この記事の画像一覧
この記事の写真をみる(8枚)