共に3年前の「THE MATCH 2022」でK-1勢から勝利したもの同士の対戦でもあった一戦。序盤は鋭いパンチと蹴りのコンビネーションで攻める笠原ペースで試合が進み、1R終了間際には笠原の飛びヒザ蹴りで中村が右目から流血する。劣勢の中村だったが持ち前のブルファイトで徐々に盛り返し、3R終盤には右フックの連打で笠原を追い込む。
そして延長R「おっしゃ!倒しにいこうと思った」という中村は開始のゴングから猛ラッシュを仕掛けて右フックからの左ハイキックで笠原をなぎ倒し、会場大爆発の逆転KO勝ちを収めた。
まさに"人獣"の異名通り、対戦相手の一瞬の隙を突く獣のような戦いぶりで決勝への切符を掴んだ中村。今回の笠原戦だけでなく、これまで何度も劇的なKO劇を見せてきた中村だが、持ち前の闘争本能を磨くために、驚くべき練習方法を取り入れている。それが海外での仮想・道場破りとも言える練習だ。
「最近タイに定期的に練習に行くようになって、基本的に事前に練習するジムを決めてから行くんですけど、タイに入ってからジムを探して飛び入りで練習することもあるんですよ。
(どうやってジムを探す?)マイナーだけど強い選手がいるところを教えてもらったり、タイでスパに行ったりすると練習に来ているロシア人やキューバ人がいて『お前もファイターなのか?』みたいな感じで仲良くなるんですよ。それきっかけでコミュニケーションを取って練習に行ったりします。
そうやって練習に行くと、最初は『なんやねん、お前』みたいな扱いなんで『ちょっとスパーリングやろうや』と言ってマススパーをやるんです。で、そこでわざと強めに当てるんですよ(笑)。そしたら向こうも段々と本気になってバチバチになるんです。
それで僕が相手のパンチを全部よけたりすると、ジムのみんなも『アイツ、なんや?』みたいな感じになって、僕を中心にスパーリングを回し始めて、最終的に1対10みたいなスパーリングになったりするんです。
(道場破りのような感覚?)そんな感じですね(笑)。でもそれで練習が終わったらみんなでご飯を食べに行ったり、SNSで交流して『お前、RISEのチャンピオンなの? そりゃ強いよ!』みたいな感じで仲良くなったり。自分はそういう練習が戦闘民族としての本質だと思うし、心からやっていて楽しいですね。(野生の勘が磨かれる?)そうですね。僕は感性で生きているんで、日頃から考えすぎないようにしているし、そういう感性を磨くべきだと思っています」
中村とトーナメント決勝を争うのは中国のエン・ペンジェー。中村とペンジェーは昨年9月大会で対戦し、中村が延長判定2-1で辛くも勝利している。中村は因縁の相手を下し、トーナメント制覇を成し遂げるか。
文/中村拓己
