■悩みは出産後も「周囲は簡単に2人目を求める」

 野曽原氏も、38歳の時に妊活をスタートした。6年間の治療で、体外・顕微受精を6回、胚移植を9回行い、44歳で妊娠・出産。そして、自身の不妊治療経験を伝える為にNPO法人Fineに参加した。

 自身の治療時には、「周囲の理解不足」で悩んだ。当時は今より治療を受ける事が珍しく、「自然妊娠のほうが優れている」という社会観が強かった。また、保険制度がなかったため、治療の総額は900万円に。「親にも友人にも、職場にも一切他言しなかった」そうだ。

不妊治療とは? NPO法人「Fine」の野曽原誉枝理事長(左列、中段)
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 治療を明かせるかどうかは、「環境による」と説明する。「従業員の8割が男性の職場では、特に50〜60代男性が夫婦生活や性の問題と捉えて、『ここでそんな話をしなくても』となる傾向がある。不妊治療を特別に捉えている人が多いと、なかなか言い出せない」。

 不妊治療の悩みは、出産後も続く。まずは「2人目問題」だ。カミングアウトしていないため、周囲は簡単に2人目を求める。すると、悪気はないとわかっていても「簡単に言ってほしくない」という憤りや、もう治療はしたくないという「疲労感」、期待に応えられない「劣等感」が募る。また「子どもにどう伝えるか問題」も存在する。治療の末に生まれたことを伝えるべきかを悩み、「治療の影響で子どもに障害が出たら?」と考え込むこともあるという。

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