【写真・画像】 3枚目
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 捜索隊が再訪すると、倒木が切られ通れるようになっていた。ただ、悪路なのは変わらず、道幅が狭くなっている崖道の連続に、捜索隊は「うわっ、右、断崖絶壁!ヤバい!」「こんな道今までなかった」「本当に怖い」と慎重に車を進める。

 ひらけた道に出た後、藪をかき分けるように坂道を登っていくと、さらに広大な“草原”が広がっていた。その牧草地には、衛星写真では確認できなかった、ポツンと残された一軒家があり、かつては足尾銅山の製錬用の木を切り出す林業労働者の家族が住んだ元集落という、この土地の歴史も紐解かれていく。そして、酪農に力を注ぎ続けた夫婦と一家の物語も。

 もう牧草は必要ないものの、牧草地が荒れないように年1回、草刈りを続けている。「牛が大好きですし、まだまだ酪農をやりたいんです」と語る妻。一方、夫は「牧草地として貸したいけど、何年か待ってダメなら林に戻す」と現実的な考えを示しつつ、「私の代で酪農が終わってしまったのは、少し寂しい気持ちもありますが……。これからは、牛飼いの世界ではなく、知らない世界に夫婦で旅に出てみたい」と次の楽しみも見出していた。

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