停戦合意をする前も情勢の悪化で注目された「ホルムズ海峡の封鎖」は今後も起こり得る可能性はあるのだろうか。アジアや中東など新興国のマクロ経済・政治分析が専門の第一生命経済研究所 主席エコノミスト・西浜徹氏に聞いた。(※「浜」は正式には「まゆはま」)
イランによるホルムズ海峡の封鎖。もし実行されれば、原油価格の高騰や供給不安が世界中に波及し、企業活動や物流コストにも影響する。当然、生活への打撃も避けられない。
「この海域(ホルムズ海峡)に世界の原油供給の約2~3割が通っていると推定されている。日本も、中国をはじめアジアの国々はホルムズ海峡を通じてやってくる原油もしくは天然ガスに依存しているため、幅広い経済活動に悪影響が出てしまう」(第一生命経済研究所 主席エコノミスト・西浜徹氏、以下同 )
「日々の生活で一番わかりやすいのはガソリン価格。もしくは電気料金、ガス料金、幅広く生活必需品の物価」
ホルムズ海峡という“切り札”を手に、優位に立っているようにも見えるイランだが、その一方で、「封鎖」は大きなリスクを伴う。最大の理由が、経済面での“中国依存”である。アメリカの経済制裁により、イランから原油を輸入する国がほとんどいない中、中国が輸出先の大半を占めている。
ホルムズ海峡の封鎖は、イランにとって「抜かずの宝刀」だと西浜氏は表現する。威嚇の手段としては強力だが、一度、刀を抜けば自国への打撃も免れない。実際に封鎖に踏み切る可能性はあるのだろうか。
「仮にこれ(抜かずの宝刀)を抜いてしまった場合、中国や周辺国との関係を考えると、イランへの悪影響も大きくなってしまう。実は抜いたが最後、イラン経済もしくはイランの政治体制にも悪影響が出てくる可能性があると考えると、見せつけている間が実は一番、威力があるのではないかと考えている」
“封鎖の可能性”を示すことで、イランが国際社会に強い圧力をかけていると指摘。その行方を左右するのが当事者の対話だけでなく、日本を含む国際社会の関わり方だという。
「まずイスラエルとイランがどうちゃんと交渉を進められるのか。それに向けては当然、裏側にいるアメリカの働きかけ、もしくはイランの後ろにいるロシア、中国、いろいろな国を巻き込みながら協議体ができることがまず必要。日本として伝統的な友好国であるイランに対して、中間的な立場としてどうなのだということを見せていくのも必要なのだろう」
封鎖されたらどうなる?「最悪の場合には停電」
