■アメリカと交渉することの難しさ 第1次政権時も「日本の話を聞いてくれたのは4回目から」

アメリカの対日貿易赤字
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 海外各国も苦慮する「トランプ関税」に対する交渉だが、日本は赤沢氏が毎週のように訪米を重ねてきた。第1回こそトランプ氏まで同席したが、その後はアポなしでの訪米が続き、主要人物との直接対談も実らない状況が続いている。まずトランプ氏が、このタイミングで相互関税を30~35%に引き上げると発言したことをどう捉えるべきか。

 渋谷氏は「トランプ大統領お得意の脅しを日本にかけてきた。ロシアと中国にも関税を上げると言ったが、全然効かなかった。だがNATOの国々に国防費を5%にしないと出ていくと言ったらみんな言う事を聞いた、カナダにもデジタル課税をやめないと関税を上げると脅したら、一晩で折れた。脅しが結構効くという成功体験を持たれてしまった」と分析する。トランプ氏が苛立ちも見せながら発言をしたことについては「トランプ大統領をあそこまでイライラさせる日本の交渉力は意外に大したものだ」と評価もした。

 赤沢氏が繰り返し渡米し、さらにはアポなしでも出向くことについて弱気と指摘する声もある。2ちゃんねる創設者のひろゆき氏は「赤沢さんの初手が失敗だった。『格下の格下と会ってくれた』という表現は、トランプ大統領の器の広さを伝えたかったと思うが、相手側は偉くもない人と会ってもしょうがない、自分の威厳が下がるだけだと思っているのでは」と指摘すると、文化通訳のネルソン・バビンコイ氏も「必死さが伝わることが、かえってマイナスにもなる。アポが取れない時点で、日本が舐められている。相手にしなくても来るものだと思われているのでは」と述べた。

 ただ、第1次トランプ政権時の交渉に携わった渋谷氏は、その難しさを赤裸々に語る。「第1次政権の時、日米貿易交渉の第1回はライトハイザー通商代表と茂木大臣だった。アメリカが言ったことは『日本は貿易黒字、アメリカは貿易赤字、アメリカは被害者』だということ。アメリカが日本に譲ることは1つもなくて、日本が一方的に譲歩するべきというところから始まった。最初の2回はアメリカ被害者論でほぼ終わり、3回目からようやく中身の議論に入れた。日本の話を聞いてくれるようになったのが4回目ぐらいだ。アメリカ相手に交渉するのは相当な忍耐力、粘り強さがなくてはいけない」。

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