■自動車関税交渉は武器なしの「無理ゲー」か
関税交渉をさらに難しくしているのが、相互関税とセットで交渉されている自動車関税だ。石破茂総理も相互関税と自動車関税は「パッケージ」という表現を繰り返してきたが、渋谷氏はトランプ氏が、これを切り離して交渉したい様子が伺えるという。「おそらくトランプ大統領は相互関税だけディールしたい。(日本がアメリカの)貿易赤字を減らす努力をすれば(相互関税を)10%まで下げるというのがアメリカの考えで、日本もかなり提案して交渉もいいところまで行っている。ただ自動車の25%については溝がものすごく深い、そこが埋まらないのが一番の原因だ」。
自動車は年間約150万台が日本からアメリカに輸出され、またアメリカ国内でも300万台以上の日本車が生産されている。渋谷氏は、トランプ氏の中にある日本のイメージが古いところで止まっていると語る。「トランプ大統領が言っているのは1980年代頃のイメージ。日本は全然アメリカの車を買わないというが、日本のディーラーがいろいろ手配したのに結局売れず、アメリカのメーカーがほぼ撤退をした。その代わりにアメリカに日本車のメーカーが工場を作り、今アメリカで走る日本車の6割はアメリカで生産されたものだ」。
さらにこの自動車事情は、アメリカの政権が変わる度に同じ説明を繰り返しきた過去もある。「日本政府はその度に1から同じ説明をして、ようやく閣僚レベルで議論が深まったが、トランプ大統領にはまだ話が十分上がっていない。安倍晋三総理も粘り強く説明したが1回や2回説明しただけでは全然わかってもらえず、10回ぐらい説明してようやく伝わった」と、トランプ氏と親密な関係を築いていた安倍氏ですら苦労したものだと明かした。
自動車関税についての交渉の難しさは、近畿大学情報学研究所所長・夏野剛氏も同調するところだ。「自動車については、日米間においてずっと大きな問題。トランプも貿易赤字の存在そのものが悪だと言っている限り合意はできない。これは無理ゲーだ」と表現した。その上で、赤沢氏が繰り返し訪米することには「『7回も行っている』とか言っている無責任な人に、何を考えているんだと言いたい。無理ゲーをなんとかしなくてはいけないところに、なんとか向こうに行って同情でもなんでもいいから、トランプがちょっとでも気持ちを変えてくれるぐらいしか解決策がない」と、アポなしでも訪米する意味を述べた。
さらには「逆に言えば国益を考えて現場が頑張っていると思わなくてはいけない。別に妥結しなくてもトランプは困らない。自動車の関税がかかって日本の自動車産業が困るだけで、つまりこちらには武器がない。対等に交渉しているような勘違いをするのはやめた方がいい」と、前提として苦しい交渉であることへの理解を求めていた。ひろゆき氏も「赤沢さんはひたすらアメリカに滞在するべき。第1次トランプ政権の時、孫正義さんがトランプタワーに素で行って、たまたま予定が空いたトランプ大統領と話せて、メディアで紹介された。もうミラクルにかけるぐらいしか日本政府にできることはないので、そのままアメリカに居続けて、何もなかったとしてもしょうがない」と述べていた。
(『ABEMA Prime』より)

