■「イメージを変える入口としてはアリ」「他にも様々な困難がある」
大手予備校で化学講師を務める坂田薫氏は、女子枠に賛成の立場。「最終目的は『女性の科学者を増やす』ことだと思うが、女子が増えれば環境を整える必要が出てくるので、そのカンフル剤になる。全ての課題が解決するわけではなく、博士課程に進んでもらうための努力などはまた別で必要だが、イメージを変える入口としてはアリだ」と評価する。
一方、慶應大学大学院生で推薦対策塾「スキルパス」代表の國武悠人氏は、「女子枠は真の多様性につながらない」と考えている。「理系の女性に対するアファーマティブアクション(積極的差別是正措置)は必要だが、“女子枠”という手段を正当化する根拠にはならない。欧米では50年以上の議論で、『女子枠は違法な性差別だ』という決着がずいぶん前についている」。
その背景として、「理系に進学しにくい人がいるのは女性だけではない」ことを挙げる。「実家が貧しいとそもそも大学に行きづらく、学費の高い理系ならなおさらだ。介護をしている、両親の理解がない、地域の進学率が低いなど様々な困難がある中で、“女性”という1属性にだけ注目する正当性はなかなか主張できない。憲法学でも『女子枠のクオータ制(性別基準で女性または両性の比率を割り当てる制度)は差別の疑いが高い』と指摘されている」。
■生命科学研究者・高橋祥子氏「女子枠は根本的な解決にはならないが、やむを得ない」
