■生命科学研究者・高橋祥子氏「女子枠は根本的な解決にはならないが、やむを得ない」

 理系の女子学生の割合は、理学は27.9%、工学は16.1%にとどまる。また、女性研究者の割合は、イギリス39%、アメリカ34%に対して、日本は17.5%でOECD(経済協力開発機構)の中で最下位だ。

 生命科学研究者の高橋祥子氏は、「女子枠は根本的な解決にはならないが、きっかけにはなり得る」との見方を示す。「東北大学は『女子枠を設けない』と言っているが、総合型選抜の機会を増やすことで、女性比率が上がっている。浪人生には女性が少ない。本人がしたくない、あるいは親が許さない環境があるためで、機会を増やすだけで女性比率が上がる可能性がある。ただ、そういった事例は時間がかかるため、手段としての女子枠はやむを得ないと思う」。

女性研究者の活躍促進(高橋祥子氏、右列中段)
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 自社の女性研究職員にヒアリングしたところ、理系に進んだ背景には、「教師や親戚など、身近に理系の女性がいた」「親に反対されなかった」という2つの要因があったということだ。

 坂田氏も、「工学部に行きたい女子受験生の壁になっているのは、親や先生だ」と同意。「親から『工学部は男性が行くところ。妊娠・出産後に戻りにくいから、パートで働きやすい薬剤師や医師になりなさい』と言われ、諦めた学生も見てきた」として、「意識改革に一番いいのは、高橋氏のような女性がもっと前に出ること。女性科学者が結婚・出産を経ても活躍している。託児所がある大学もあるなど、親に『昔とは違う』と知ってもらうことが重要だ」と述べた。

 これに國武氏は「イメージで議論が進むのはよくない」と指摘。「性別を理由に親から進路干渉を受けたか、を聞いた内閣府の調査で、女性は若い年代ほど干渉が少なく、逆に男性は増えている。古い考えを持つ親が減る中で、あえて女子枠という手段をとる必要性がどの程度あるのか、それが論点の本質だ」とする。

 また、ネット上にある「男性差別」の声に対しては、「女子枠は“女性以外に対する差別”であり、“貧困者差別”でもある。女性であるだけで困難を一方的に認めてもらえるというのは、貧困や地域性、周囲の理解などで悩む男性などを考慮していないわけだ。大学入試関連の学会でも『女子枠はおかしい』と言っている大学教員は多いし、法学の領域では、生まれ持った属性を使うことは憲法違反の疑いが強いという意見が多数説になっている。『反対するネットの声』をただ取り上げるのは、問題の矮小(わいしょう)化につながる」と訂正した。

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