■これからの時代はコミュニティ?地方テレビ局にもチャンス

テレビ局の女性役員
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 “職人”出身者として、「アナウンサーにとっては、ずっと番組に出続けられることが一番の幸せだ。しかし、その中でも新しいことに手を伸ばしていたら、自分にできることが俯瞰で見えてきた。メッセージングという専門分野は、社長でも生かせる」と考えている。

 最近ではメディアの経営体制が問われる場面が少なくない。「ローカル局は、外部人材を直接経営に招くよりも、地域にいる人々から刺激を受けて、アイデアを取り入れる。イベント出展で、地域の課題解決を一緒に考える接点を作りたい。県内26市町村から、特産品や後継者の悩みを持ち寄り、私たちをハブにして課題解決できるのは、小さい局だからこそだ」。

 文筆家で情報キュレーターの佐々木俊尚氏は、「ローカル局では、視聴者層に合わせてなのか、高齢者向けのニュースが多い印象を受ける。宮崎は若い移住者も増えているが、一方で高齢化や過疎化も進み、世代間対立や分断が広がっている」として、「地方局の戦略」を問う。

 これに榎木田氏は「ニッチな部分も含めて、各世代に沿ったコンテンツを作ることが、生き残りのカギだ」と返す。「高齢でも楽しめるコンテンツは必要だが、若い世代が見る番組もないと、視聴率や利益につながらない。若者向けイベントも立ち上げたが、それを番組とひも付けるような付加価値の戦略で、世代ごとに刺さるコンテンツを届けたい」。

 佐々木氏は「次のインターネットは、小さな共同体に回帰していくという議論が、いまアメリカで起こっている」と説明する。「リベラリズムが退潮して、これからは共同体主義だと言う哲学者もいる。その点で地方紙や地方局といったローカルに根付いたメデイアには可能性があると考えられている」。

 一方で「入口がNetflixやAmazon Primeになって、テレビ局がコンテンツ供給能力しか持っていない状況になり、ビジネス化の正解が見えない」といった課題もあるため、「キー局はコンテンツを持っているが、ローカル局ではリソースが割けない。配信が脅威になっている一方で、顔が見える共同体をビジネス化したい願望もある。そのはざまで、どう着地するかが一番大きな課題だろう」と推測した。

 榎木田氏は、メディアにどのような可能性を見いだしているのか。「“オールドメディア”は褒め言葉だ。55年間しっかり地元に根ざしてきた。SNSやウェブメディア、アプリも作っているが、UMKの名前があれば、宮崎県民に安心してもらえる。安心感とブランドを活用して、新しい形をどんどん発信しないといけない」。
(『ABEMA Prime』より)
 

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