■「寮生活だと24時間おびえないといけない」
トランスジェンダー女性のかえでさんは、男女共学の大学4年生で、戸籍性は男性、性自認は女性だ。性別適合手術やホルモン治療はしておらず、カミングアウトもしていない。LGBTQサークルの代表を務めたが、サークルではLGBTQであることのみカミングアウトしている。また去年までトランスジェンダーとは伝えていたが、今年から言わないことにした。
福岡女子大の試みについては、「寮生活を考えるうえで、周囲への影響よりも、トランスジェンダー本人が抱える不安について着目したい」という。「大学で女性として生活していても、メークを落としたスッピンが男性に見えたり、性別の移行状態によってはヒゲが生えたりする。大学の滞在時間が数時間なら影響は少ないが、寮生活だと24時間おびえないといけない」。
そして、「カミングアウトすると、やはりネガティブな目線で見られる。するにせよ、しないにせよ、トランスジェンダー本人のメンタルは落ち着かない。“絶対にバレちゃいけない自分”におびえながらの生活は落ち着かないため、24時間大学に拘束されるのはどうなのか」と心配する。
一方で、「実家や1人暮らしであれば、学びの機会を広げるために、トランスジェンダーの受け入れは選択肢だ。ただ、体格差や声でバレてしまうケースは結構あるため、周囲に与える影響がゼロではない。互いが共生するためには、どうなのかとも思う」。
個人の価値観としては、「トランスジェンダーを受け入れる女子大と、受け入れない女子大。両方あってこその多様性だ」といい、「私は“オカマ”や“ホモ”と言われて、いじめられた経験があり、同じキャンパスにいたら怖いところがある。肝心なのは、女子大だからこそ存在する学部で、そこでしかできない学問を学びたいか。学問は多くの人に開かれているべきだ」との考えを述べた。
■「多様性を武器に変な理想をぶつけてくる人がいる」
