集落を後にした捜索隊は、延々と続くつづら折りの林道を進み、やがて山頂を越えてさらに森の深みへと入っていく。美しい清流沿いの道をさらに進み橋を越えると、黒を基調としたモダンな建物が忽然と現れた。しかし、建物の入り口にある門は厳重に閉鎖され、人の気配もない。所有者の情報がない中、捜索隊はメッセージをポストに投函して返事を待つことに。

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 4カ月後、なんと所有者から連絡が届いた。捜索隊が改めてポツンと一軒家を訪問すると、にこやかに出迎えてくれたのは69歳の男性。8年前、地元の林業関係者の元別荘を購入し、大阪で飲食店を営みながら二拠点生活をおくっているという。車で片道3時間弱かかるものの、週1回は必ず来て、3日は滞在するそうだ。

 飲食店を開業するまでに、アパレル、不動産業、工務店など多彩な職歴をもつ男性。3年目に台風で川が氾濫し母屋が全壊するも、「自分の思う家を建てるきっかけになった」と自ら図面を描き、主要構造以外は仲間の手も借りながら、得意のDIYで理想の内装に仕立てた。

 地域にも馴染みながら、地元の縁を通じて地産の食材を使った料理を飲食店でも提供している男性。そして、こだわりと趣味が詰まったまさに“隠れ家”とも呼べるようなこのポツンと一軒家には、地域の人だけでなく飲食店の常連客もたびたび遊びに来るのだという。

 建物に入ると、全面木材であたたかみがあり、かつ間仕切りなしの大空間が出迎えてくれる。飾り棚や作業机、椅子、食器棚、キッチン・キッチンカウンターなどはすべて自作。川に面したお風呂は眺望抜群で、薪ストーブも設置予定だ。そこには「自分も楽しみながら、お客さんも楽しめるように」という思いがある。

蛍があらわれる6月初旬に再訪!
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