すると男性が「ついてきますか? そのほうが早いですし(笑)」と親切にも案内役を買って出てくれた。集落からどんどん山奥へと入っていくと、車を停めた男性が「ここから先は車に傷がつくかもしれないので、歩いて行ったほうがいい」と教えてくれた。そこはまだ雪の残る荒れた山道で、約200mほど進んでいくと、民宿の看板と大きなログハウスが見えてきた。
しかし、訪れた日はあいにく不在。看板に書かれていた電話番号へ連絡すると、春の営業再開に向けた準備中だということで、再訪問の約束をし、2カ月後に改めてこの地を訪れた。
4月には雪もとけ、新緑が美しいのどかな景色が広がっていた。そこで出迎えてくれたのは、笑顔が印象的な女性(56)。ここはペンション兼住居で、「1人での運営なので1日1組貸し切りでやっています」という。リピーターが多く、年内の土日はすでに満室だそうだ。
常に穏やかな笑顔を浮かべる女性に話を聞いていくと、苦労が絶えない半生だった。両親の入院が重なったため、高校に進学せず鮮魚店でアルバイトをし、20歳過ぎの時に父親が49歳で早逝。その後、病気がちな母とともにこの地に1000坪ほどの土地を購入し、母が図面を手掛けたログハウスを建設した。しかし、その母も23年前に他界し、現在は90歳になる伯母の世話をしながら、ペンションを切り盛りしている。
「良き友であり、良き仲間であり、何でも話すことのできた母親でした。遺書があって、最後に『あなたと出会えたのが一番の人生の幸せでした』って。その時はうれしくて号泣しました」
「やらないで後悔するよりは、どんなことでも楽しんでやってみる」
