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 このポツンと一軒家の主は、78歳の男性。生まれ育ったこの土地は、「私の原点」と語るかけがえのない場所だった。4代前から続いていた生家が建っていたものの、41年前の台風被害で倒壊してしまったという。麓に移って長年放置されていたが、12年前に整備してログハウスを建てた。

 建設は男性が63歳で退職した後、1人で始めたという。所有する山の石を集めて石垣を築き、自生していた防風林の木を切り出して2年かけて乾燥させ、チェーンブロックを使い大きな梁も一人で組み上げた。設計士の息子に設計してもらい、5年もの歳月をかけてこのログハウスを完成させた。「普通の家は、頼んだらいくらでもできる。だけど、ログ(ハウス)は見栄えがいいかなと思って」。幼い頃、この地で見た道路の土木工事の様子に憧れ、工業高校に進学し建築の道に進んだ経験が生かされた。

 建設の背景には、最愛の妻との悲しい別れがあった。21年前、妻の肝臓がんが発覚し、54歳の若さでこの世を去った。「前兆はわからなかった。魚釣りから帰ってきたら、『お父さん、病院開いているから連れて行って』と。その時はもう調子が悪かった」。妻の病状に気づけなかった後悔と、余命宣告を受けた際の深い悲しみ。その後没頭したのが、このログハウス造りだった。「彼女を忘れるため、(紛らわすのに)一番だと思って」。

妻が亡くなる前に選んだ“末孫の名前”の花言葉
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