今回の賃上げの規模 エコノミストはどうみる?

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 街の人から様々な声が上がるなか、今回の賃上げの規模についてどう考えるのか。また、賃上げの副作用のようなものはあるのか。ニュース番組『ABEMAヒルズ』のコメンテーターでエコノミストの崔真淑氏は次のように述べる。

「自分の手取りが増えることは、私も含めて全ての人が嬉しいと思う。ただ、経済成長が大幅に伸びている環境でやっていないことは、インフレを加速させたり、雇用のパイが減る可能性はある。さらには、賃金を上げる代わりに、中小企業を中心に生産性を上げて利益を上げられるようにしたらいいじゃないかという声がある。一律6%上がることは過去になかったが、最低賃金が一気に上がった地域とそうでない地域を比較する研究をみると、大幅に最低賃金が上がった地域においては、確かに中小企業の生産性は改善されていた。でも、それは単に優良な中小企業が生産性を上げようと頑張っただけであって、生産性を上げられなかった中小企業は倒産や辞めざるを得なかったという2極化が進んだ」(崔真淑氏、以下同)

 最低賃金が影響するのは、若年層と高年齢者層と言われている。また、影響する労働者のうち7割が女性だ。これはどういったことを意味しているのだろう。

「最低賃金の近辺で仕事をしている人は、半分以上が世帯年収500万円以上の配偶者。日本の場合は妻や学生だ。女性のほうが圧倒的に多いのは、パートに出ているお母さんや奥様が働いている割合が非常に高いことで、女性のほうが最低賃金の影響を受けやすい。男性においても、学生がバイトしていたり働いている場合、最低賃金近辺が多いので影響を受けやすい」

 大企業は対応できるかもしれないが、中小企業は対応できるのか。

「生産性を高めていたり、非常に珍しい部品を作っている中小企業は対応できると思う。しかし、サービス業や小売業、いわゆる非製造業を中心に人件費がメインのコストになっている。だからといって、トップラインの売上高がすごく伸びているかというと、やはり日本全国、消費が物価高によって少し厳しい動きもあるので、すぐに生産性を上げられる状況ではない。なので、中小企業のほうが影響は出やすい」

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