“160万円の壁”に早く到達…人手不足に拍車?
もう1つ懸念点がある。時給が上がると、いわゆる160万円まで引き上げられた年収の壁に早く到達する。人手不足に拍車がかかる可能性はあるのか。崔氏はこのような見解を示す。
「160万円よりもはるかに高い水準で仕事をしている人、所得をもらっている人にはそこまで影響はないかもしれないが、この壁を意識して働いている人たちが多い産業、例えば非製造業の小売サービス業は、より人手不足や人手不足倒産に拍車をかける可能性がある。なので所得控除、いつの間にか基礎控除の話も立ち消えになってしまっているし、いわゆる年収の壁の話、控除枠の議論も早くしてほしい。ガソリン減税の話ももちろん重要だが、ここがやっぱりセットじゃないと、最低賃金を上げても『社会保険料を上げたいだけでしょ』とネガティブな声が増えてしまう」
これまでは景気が上向かないと賃金が上がらない印象だったが、石破総理は「賃上げこそが成長の要」だと強調した。賃上げが先か、成長が先か、この議論についてはどう考えるべきなのか。
「経済成長が先。日本は何によってGDP、経済成長を上げてきたかというと、雇用への波及効果、景気を底上げさせる作用としては、自動車や製造業、特に輸出、輸出製造業が本当に重要になってくる。ここが元気じゃないと、日本の経済全体が回りにくいのが日本の特徴。日本の輸出産業『円安で絶好調なのでは?』という声があるが、確かに金額ベースでみると日本の輸出は伸びている。しかし数量ベースでみると、2008年のリーマンショックの頃からずっと右肩下がりで、海外で日本の物の数自体は売れなくなってきている。国として何が必要なのかというと、日本の物や日本の輸出製造業の物を政府が押し売りするぐらいの勢いでトップラインを増やしていく。中国の電気自動車メーカーやアメリカ、そしてヨーロッパの国の動きをみても政府が介入して売ってきている。関税の話で交渉しに行くだけではなく、『日本の物はこんなにいいんだ、どんどん買え』と、それぐらいの態度がないと輸出、そしてトップラインの伸び、経済成長は少し厳しい」
政府は目標として、最低賃金を2020年代に全国平均1500円、毎年7%以上の上昇が必要としている。この数字を崔氏はどのように見るのか。
「結構すごい数字。日本のGDPの成長率1%もあるかないかという状況なのに、最低賃金は毎年7%上げていくということは、政府もやはり使命として、日本の物を海外に売り込むことを同時にしてほしい」
(『ABEMAヒルズ』より)
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