■ペーパーティーチャーがいきなり教壇に
元ペーパーティーチャーのタマさんは、10社以上の勤務経験があり、50歳を過ぎてから教員になった。現在は中学校で常勤講師として国語を教えている。「お寺を回る仕事をしていて、和尚さんと話す中で、子どもたちの未来を考える機会が増えた。初めは市役所の児童相談員を考えていたが、そこで教員不足を知り、軽い気持ちで講師登録したところ、翌日すぐに連絡が来た」。
教師として働いてみた実感は「本当に忙しい。民間でもブラック企業に勤めていたが、教育現場も言われるとおりのブラックな環境だ。ゆっくり席に座れる休憩時間はない。業務時間内で終わらない教材研究などで、土日も学校へ出なくてはいけない。ただ公務員で給料が出るため、民間のように給料やボーナスがないわけではない」という。
研修はどうだったか。「国語の先生だった教頭とのチームティーチングを通して、一緒に授業を見て、指導を受けた。国語科の主任からもコツを教わった。ただ、新卒ピチピチの先生ならきめ細かく教えてもらえるのだろうが、年齢がいっているため、『学びなさいよ』と冷たかった」。
一方で、社会経験ゆえの利点もある。「『免許を取ってから30年以上、教壇に立ったことがないが大丈夫か』と聞くと、『営業などで話をしていたなら十分だ』と言われた。教えるのは中学生の内容のため、しっかり記憶を呼び起こして、教材を深める時間は必要だ。ただ、初めにある程度時間をかけると、後はルーティンになる」。
元ペーパーティーチャーの田中花さんは、就職・結婚後に10年ほどの専業主婦を経て、教育委に講師として登録した。現在は公立中学校で非常勤の音楽講師をしているが、「非常勤講師は、定年を迎えた先生などがする仕事で、研修もなく、いきなり授業を始めた。教育実習から10年たっていたが、サポートもないまま急いで準備をした」と振り返る。
一方で、非常勤講師のため「授業に関することだけで、さほど多忙ではない」とも話す。「実技科目なので特殊だ。音楽の教員は主任と私の2人しかいないが、主任はすごく忙しく、なかなか捕まらない。現場でなんとか時間を取ってもらっている。私は幸い、友人や身内に教員が多いので、授業の進め方や評価方法のアドバイスをもらって、なんとかこなしている」。
■動画で見せるのではダメ?現場に教員がいる意味は
