■「中小企業庁で『淘汰されればいい』という言葉は聞いたことがない」
「実質的に倒産状態だが営業を継続している」「債務不履行状態が続いている」といった企業は“ゾンビ企業”と呼ばれ、全国に22.8万社存在、ゾンビ率は15.5%(2024年11月末時点)とされている。帝国データバンクの定義(国際決済銀行定義)では、設立10年以上で3年連続ICR(インタレスト・カバレッジ・レシオ)が1未満(入ってくるお金÷出ていくお金)となる。
そんな中、中小企業に対する支援は様々で、「補助金(ものづくり、持続化、IT導入など)」「金融支援資金繰り、マル経融資など」「税制優遇(賃上げ促進、事業承継など)」「事業承継支援(M&A、グループ化など)」「取引支援(下請法、フリーランス保護)」などがある。
一方で、宮崎は「支援制度は結構あるが、申請が大変で、審査も厳しい。そのために専門家を雇わなければいけないこともある。ただ、不正に給付金を受け取る悪徳な人もいるので、そこは精査した上で、頑張りたいのに頑張れない企業は淘汰されるべきではないのではないか」と投げかける。
これに立石氏は「経営者には、もっと経営者になってほしい。欧米だったら“自分で取りに行け”で、良い仕入れ先を向こうから教えてくれることなんかない。でも、日本はここまで支援したことで、なんなら“もらって当たり前”の企業も出てきている」と苦言を呈した。
また、日本の経営者は「最も数字に弱い」とも指摘。「例えば、利益がどれだけ取れているか、決算書をきちんと読めるのか。そこを変えたいと、中小企業政策審議会の中で入れたのが『経営者リテラシーの向上』。来春から銀行の融資制度も変わるので、そこに合わせてもうちょっと数字を見ようよと、推進する方向に行こうとしている。やはり収支の計算ができなければ淘汰されていく」とした。
ただ、「中小企業庁で政策議論を十数年する中で、『淘汰されればいい』という言葉は聞いたことがない」という。「それは単純に“自然淘汰”されるから。誰かの言葉に乗って言ってしまっているだけではないか」と指摘。さらに、人口減少社会では辞めた人が“次に行く職場”があるという認識が重要であり、「生産性が低いからダメなのではなく、地域社会を守っている企業も存在する」との認識を示した。
こうした議論を踏まえ、石川氏は「賃金を上げて従業員に還元していくことは、経営者として常に考えている。それを政府主導でやろうというのは、ある一定以上になると厳しいということは理解してもらいたい」と訴えた。(『ABEMA Prime』より)
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