■「猛烈に働く」ことの是非

元キーエンス営業トップの小野松健太氏
拡大する

 小野松氏は地元・北海道から京都府の同志社大学に進学後、社会人1年目で岡山県へ、3年目で広島県へ転勤し、苦悩を経験した。「友達はいないし、打ち解けられる仲間もいない。“今はまだ会社にぶら下がってる。強くなったら自分でいくらでもできる”と思い頑張った。嫌なことが自分を高ぶらせた」という。

 ある種の「若手のうちに働くべきだ」という風潮に対し、小林氏は「いつまで頑張ればいいのか」と疑問を投げかける。「成功した方は『若いうちにやっておいて良かった』という振り返りができる。しかし、40代、50代でも若手のように働いて、出世できなかった場合にどうするのかと」。

 また、若手の成長志向の低下も指摘した。「無理してまで◯◯しない」という意識が浸透した上、未婚率上昇で「一人で暮らすコストを稼げればいい」という意識が出てきたこと。職場環境のホワイト化や売り手市場化の進展で、業務外の学習・自己啓発活動が減少、加えて生成AIなどのテクノロジーによって「成長」の定義が揺らいでいる可能性があるとする。「日本は未経験入社が多く、一人前になるまで時間かかる中では、この成長意欲の低下のほうがずっと問題ではないか」。さらに、ハラスメント対策が進んだことで、「無理してまで学校行かなくていいよ、今の会社で働かなくていいよ」という感覚が広まったことも影響していると分析した。

 小野松氏は、キーエンスでの働き方を振り返り、「自分が“前向け”と思ったら、前に行かなければいけない」「言われたことをまずやるのは、時代がどうこうではなく人として当たり前だ」と主張。「飲み会は行くものだし、空気は読むもの。そうした“前提”に『いやいや…』と言うのは違うと思う」との考えを示す。

 しかし小林氏は、「そのような働き方が通用するのは、労働時間を投下して同じものを作って稼げるモデル、いわゆる製造業モデルだ。それができる企業ではある種正解だが、通用しない企業は持たない」と返答。さらに、「人が集まらない。稼げていれば問題ないが、労働人口が減っていく中では、“何歳まで持つか・何人まで規模を拡大するか”の分かれ道になる」と見通した。

■管理職は“罰ゲーム”化?
この記事の写真をみる(5枚)