作家・那須正幹さん
【映像】絵本になった那須さんの“遺稿”(複数カット)
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 8月6日。広島は80回目の原爆の日を迎えた。

【映像】絵本になった那須さんの“遺稿”(複数カット)

 その広島を描いた絵本『やくそく ぼくらはぜったい戦争しない』。作者は『ズッコケ三人組』シリーズなどを手掛け、2021年に亡くなった作家・那須正幹さんである。

 今年、ポプラ社から刊行されたこの絵本は那須さんが亡くなった後に公表された「遺稿」とも言える原稿から作られた。

 自身も3歳の時に広島で被爆し、多くの作品や講演などで戦争の悲惨さや平和の大切さを訴えてきた那須さん。

 遺作となったこの絵本には、どんなメッセージが込められているのだろうか。絵本の作画を担当した絵本作家の武田美穂さんは、次のように説明する。

「より小さな方に命の大切さとか、戦争っていうことをしちゃいけない。なぜならば、命が大切なんだという根源的なところを、すごく優しく噛み砕いて作った本だと思います」(絵本作家・武田美穂さん、以下同)

 お話の舞台は現代の広島。原爆で肉親を亡くし、ひとりぼっちで大きくなった「ばあちゃん」との交流を、中学生の孫・ヒロシくんの目線で描いている。

「人の心や人を大事にしようって、やっぱりそういうところから。人を大事にすることが第一歩で。そういう人たちは戦争なんてしないんですよ。そういうことが伝えたくて」

 武田さんは、戦後50年には那須さんとコンビを組み『ねんどの神さま』という絵本を制作するなど、長年の交流があった。那須さんからは自身が被爆した時の話も聞いたという。

「板切れ一枚で生死が分かれたっていう話をなさってて。板切れのこっち側に那須さんはいた。でも向こうにいる人は死んじゃってた。そういう話をするときには非常に怖いお顔で話してました。『本当に戦争なんてくだらないからしちゃいけない』って何度も何度も私は那須さんの口から聞いています」

 被爆する前の子どもの頃に戻ってしまったかのような「ばあちゃん」との穏やかな日常を通じ、中学生のヒロシくんは「ぼくらはぜったい戦争なんかしない」と決意する。

 実はこの絵本の原稿は、もともと歌詞として書かれたものだった。「ばあちゃんの詩」というタイトルが付けられたこの原稿が公になったのは那須さんが亡くなった後のことである。

亡くなる前に那須さんが語ったこと
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