あとがきに掲載された那須さんのエッセイ

那須正幹さん
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「子どもたちに戦争の悲惨さというよりも戦争の実態、あるいは原爆の悲惨さではなく実態。それを伝えるような物語を。まあ僕も72ですからあと何年書けるかわかりませんけれども、書いていきたいと思っております」(那須正幹さん)

 2014年に広島で行われた講演会で作家として戦争の実態を伝える決意を語っていた那須さん。戦後70年を迎えた2015年には、多くの講演依頼が舞い込む状況に、以下のように話していたという。

「70年の時点で語れる人がもういない。もうみんな亡くなっていた。だから被爆80年の時に僕は82歳だから。まだその時は元気だろうから。いろんな講演会とか、取材とか受けて被爆者として、きちんと事実を伝えたいっていうふうにおっしゃってたんです」(山本真治さん、以下同)

「まさに先生が80年にやろうとしていたことは、この絵本が代わりにやってくれているように感じて。先生も喜んでくださってるのじゃないのかなって気はしてるんです」

 戦後80年。那須さんの思いは絵本を読む子どもたち、そして那須さんの本を夢中で読んで育った、かつて子どもだった大人たちに託された。

 この絵本の「あとがき」には、那須さんが1990年に書いたエッセイが掲載されている。

「さあ、これから40年間、日本は平和でいられるかどうか。それを決定するのは、政府でも日米安保条約でもない。きみたちの一人ひとりが、戦争を体験した世代と同じように、いや、もっと強力に『戦争は絶対にいやだ』と、大きな声で叫びつづけることだと思う。沈黙したとたん、戦争はたちまち、きみのまわりに忍びよってくるにちがいない」(那須正幹さんのエッセイ)

(『ABEMA Morning』より)

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