■有権者の年齢層、1票格差をどう考える
投票における課題として、“1票の格差”の問題がある。小黒氏は「憲法では“地域別の選挙区制度”は想定されていないが、実務的に地域別でやっているため、1票の格差が生じている。かつて経済学者からは、年齢別の選挙区を作ってもいいのではという提案もあった」と振り返る。
加えて、「納税を基準にすることも、議論としてはありうる。若いときはウエイトが大きく、65歳以上になると小さくなる“余命投票制度”も議論されている」と説明。“0歳投票権”についても、「生まれている人は選挙権があってもいい。投票については当初、親が代理するが、高齢者でも認知能力がある場合に、代理投票が一部認められている。それと同じ仕組みでいいのではないか」と語る。
近畿大学情報学研究所所長の夏野剛氏は、「60代でも働く納税者が増えて、『65歳で引退』の常識は通用しなくなっており、ルールは変えざるを得ない。社会保障をこれ以上手厚くするのは財政的に無理なため、最高裁が認める“2票までの格差”であれば調整を入れてもいいのでは」といったアイデアを示す。
小黒氏は「今回の参院選でも、社会保険料の引き下げについて、ネット上の議論が影響していた」と分析する。「従来であれば天引きされるだけのため、声が上がらなかった。しかし少子化対策で保険料が上乗せされることも背景に、ここ2〜3年で急激に議論が広がった。医療費も、75歳以上は原則1割負担だが、3割負担の現役世代でも所得に困っている人がいる。バランスを考えるために、若者が政治に関心を持つことはよい」。
文筆家で情報キュレーターの佐々木俊尚氏は、「これまで高齢者の側を向いている“シルバー民主主義”と言われていたが、初めて現役世代の投票行動が力を持つという認識が広がった」と考察し、「今回の参院選が時代の転換点となり、『現役世代や若年層をある程度意識しないと選挙に勝てない』と認識されれば、被選挙権の引き下げ議論は間違いなく起こる」と予測した。
(『ABEMA Prime』より)

