注目の「200万総取りトーナメント」一回戦第1試合は、プロデビューから7戦無敗のDEEP☆KICK -53kg王者である18歳・棚澤と、元消防士で現在はキック選手兼ユーチューバーという異色の経歴を持つ酒寄の対決となった。

 精悍な表情でフェイスオフを終え、集中力を高めていた棚澤だったが、開始早々に思わぬ珍事が発生。ファーストコンタクトで酒寄の伸びのある左ジャブを被弾した直後、異変に気づいてレフェリーへ何やらアピール。試合は中断となった。

 会場にはなんとも言えない空気が流れ、「マウスピース忘れた?」「どんなハプニング?」「えええ〜」とファンも騒然。セコンドもイレギュラーすぎる出来事に戸惑い、なかなかマウスピースが見つからない状態が続く。「何しとんねん」「紛失事件だ」「減点だろ」といった厳しい声も聞かれた。

 その後、「マウスピースの装着を忘れていたということで、ただいま装着しています」という場内アナウンスが響くと、観客席からは笑いも起きる。棚澤は口頭注意のみで済み、ABEMA解説の一馬は「物凄い集中力ですねw」と苦笑混じりに新鋭の“うっかり”ミスをフォローした。

 試合が再開されると、棚澤は序盤からトーナメントを意識したかのように早期決着を狙い、積極的に仕掛ける。対する酒寄も下がりながらカーフキックを刻み、ジワジワと反撃に転じた。

 ややハイペースで攻めた棚澤は2ラウンド後半、酒寄のカウンターに合う場面も増える。しかし、3ラウンドでは再びアグレッシブに打ち合いに臨み、アッパーを軸に攻勢を立て直して主導権を掌握。後半の激しい攻防を制し、判定3-0の完勝を収めた。

 序盤の珍しいハプニングを振り払うかのような勝利に、棚澤は「(トーナメント)次もあるんで修正します」と、安堵とも照れ隠しとも取れる笑みを浮かべた。なお棚澤はハプニングにも動じず、決勝でも3-0の判定勝利でトーナメントを見事に制覇した。

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