市街地へのクマの出没が相次ぐ中、9月1日から市街地でも特例的に猟銃を使う「緊急銃猟」制度が始まった。クマ被害急増の原因や対策について、専門家に詳しく話を聞いた。
5月、秋田市で住宅の間をすり抜け我が物顔で庭を駆け抜けていくクマが撮影された。また8月14日、北海道の羅臼岳で登山をしていた20代の男性がヒグマに襲われ死亡した。
東京・奥多摩町でも23日、川で釣りをしていた50代男性が子グマとみられるクマに顔を引っかかれるなど被害が相次いでいる。
例年よりも増えているようなクマの出没や遭遇事件について、長年クマの研究を行っている東京農業大学の山崎晃司教授に話を聞いた。
「この数年間、増加傾向にあると言って良い。特に2023年、過去最高の記録をしているが、今年はそれに迫る統計値になる可能性もあるとみている」(東京農業大学・山崎晃司教授、以下同)
今年は過去最高レベルの捕獲数・事故件数になる可能性もあるとのことだが、なぜ今クマの出没が増加しているのだろうか。
「(クマの)出没の傾向・背景は実はもっと前から起こっていて、江戸時代もしくは中世の頃から、日本の山は人々が生活のために非常に強度に利用してきた。木を切り建築材にしたり、炭や薪にしたりしてきた」
「戦争からの復興のために木材需要が多くなり、国を挙げて拡大造林政策があった。ヒノキが日本中の山に植えられていくが、針葉樹の森は木の実がならない。つまり動物にとって利用価値のない森になる。拡大造林政策が1970年代に終わり、それ以上針葉樹への転換が起こらなくなった。日本の山は急速に森が回復していく。その中でクマだけではなく、森林性の動物が分布を拡大させてきた」
伐採による動物のすみか縮小や、過疎化や高齢化で人がいなくなった集落が森に戻ったことも、クマの増加に大きく作用したとのことだ。しかしなぜ、クマが人間の生活空間に出没するようになったのか。
「メカニズムは地域によって異なっていて、基本的にクマが人の生活空間の近くに現れる理由は、楽に手に入る食べ物があることが一つの大きなこと。例えば耕作地。リンゴ畑や家の周りに柿や栗が植えてあったり、残飯の処理が不十分だったりペットフードを外に置くと、クマが食べにくる。頭が良いため学習して、繰り返し出るようになるのがまず最初の集落に接近する一つのきっかけだ」
さらにクマの親子の間の“教育”の影響も考えられるとのことだ。
「人を恐れないクマがその集団の中で情報を共有しているわけではなく、お母さんから子どもなど縦の学習の機会に教えていることはある」
クマ被害急増…対処法は?
